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第169話

雅之は里香の澄んだ目を見つめていたが、彼女の顔色が少し青白くなり、その目の色が次第に暗くなっていくのに気づいた。

突然、里香は座り直し、「もういいわ、あなたは変わっちゃったから、もう好きじゃないの」と言った。

「何を言っているんだ?」

雅之の声は冷たく響いた。

里香は無表情で「どうせいつかはこうなることだし、今言って何が悪いの?」と言い返した。

彼女の無関心な顔とどこか謝罪を含んだ表情を見て、雅之の胸の中で怒りが渦巻いた。

「君は離婚の話をするために来たんじゃないのか?」

里香は「そうね、あなたが言わなかったら忘れてたわ」と思い出したように言い、離婚協議書を手に取ってぱらぱらとめくった後、嘲笑を浮かべながら、その書類を目の前で引き裂いた。

「離婚なんかしないから!」

そう言って、破れた紙をゴミ箱に投げ入れ、雅之の冷たい表情を気にせず、振り返って去っていった。

その通り、里香はただ彼をイライラさせたかっただけ。

何で雅之が離婚したいと言ったら、私が離婚しなきゃいけないの?

何で雅之が離婚しないと言ったら、その通りにしなきゃいけないの?

どうして雅之がすべてをリードして、私はこんな辛い思いをしなきゃいけないの?

そんなの納得できない。

病院を出ると、外はすでに薄暗くなり、街は車で溢れていたが、里香は心の中に一抹の寂しさを感じていた。

「里香!」

その時、聞き覚えのある声が響いた。

振り返ると、遠くに由紀子が立っていて、笑顔でこちらを見つめていた。

里香は警戒心を覚えたが、礼儀をわきまえて「奥様、何かご用ですか?」と尋ねた。

「一緒にコーヒーでも飲まない?」

「申し訳ありませんが、今は都合が悪いです」

以前の出来事が頭をよぎった。由紀子が里香を皆の標的にして、皋月に困らせたことを、彼女は忘れられなかった。

あの時、雅之が現れなければ、里香は子供をいじめた悪者のレッテルを貼られていたかもしれない。

由紀子は近づいてきて、優しい目で彼女を見つめた。「里香、まだ前のことを恨んでいるの?私が悪かったわ。本当に、あの子が嘘をつくなんて思わなかったの。これからはそんなことは絶対に起こらないと約束するわ」

堂々たる二宮家の奥様が頭を下げて
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