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第177話

夏実は首を横に振り、降りることを拒んだ。涙で滲んだ目で雅之をじっと見つめた。

「知ってるよ、私なんてどうでもいい存在だって。雅之のために頑張って生きてきたけど、雅之が私を必要としないなら、生きてる意味なんてないの」

そう言って、夏実は振り返り、両腕を広げて、まるで蝶のようにふわっと落ちそうになったその時だった。

「やめて!」

雅之は驚いて叫んだ。

「アッ!」

次の瞬間、横から痛々しい声が響いた。

「夏実さん、小松さんがあなたに土下座してます!」

東雲の声が響き渡った。

みんながそちらを見た。いつの間にか、東雲が里香を地面に押さえつけ、夏実の前で跪かせていた。

里香はもがきながら、「放して…」と叫んだ。

でも、彼女は東雲の力にまったく敵わず、しっかりと押さえつけられ、起き上がることができなかった。

東雲は夏実をじっと見つめ、「夏実さん、彼女が悪かったんです。社長のせいじゃありません。どうか社長に当たらないでください。こいつは恩を仇で返して、離婚を拒んでいるだけなんです!」と言った。

里香は驚いて目を見開いた。

夏実は雅之を見つめ、「雅之、これって本当なの?」と尋ねた。

雅之は何も言わず、薄い唇をきつく結び、周囲には凍りつくような冷たい空気が漂っていた。彼は東雲をじっと見つめていた。

東雲はその冷気に含まれる殺気を感じ取りながらも、里香の手を放さなかった。

「夏実さんに謝るべきです。間違ったことをしたのだから、謝るべきです!」

里香は両手を地面に押し付け、必死に起き上がろうとした。「私は何もしてない!どうして謝らなきゃいけないの?」

里香は苦しそうに雅之を見つめ、「二宮の奥様が私を呼び出したのは確かだけど、あの日の私たちの会話はそんな内容じゃなかった!私は二宮の奥様に助けを求めたことなんて一度もない。調べればすぐわかるよ!」と叫んだ。

里香は雅之をじっと見つめ、「録音だけで有罪と決めつけるのはおかしいし、納得できない!」と訴えた。

冷たい風が吹き付け、まるで真冬の雪のように、身にしみる寒さだった。

夏実はまだ屋上に立っていて、細い体が揺れそうだった。

雅之の低く響く声には一切の温もりがなかった。「里香、離婚届にサインしろ。二度とお前の顔を見たくない」

里香の顔は一瞬青ざめ、雅之をじっと見つめ、その顔に何かの感情を探ろうとし
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