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第174話

「もしもし?」

里香が電話に出ると、少し冷たい声になった。

しかし、雅之の声はもっと冷たかった。「今どこにいる?」

里香は一瞬言葉に詰まった。「何か用ですか?」

もしかして、また離婚のこと? 里香はもう何度も言っていた。調査が終わるまでは絶対に離婚しないつもりだ。なのに、何でこんなにしつこく離婚を迫るの?

ふと、彼の態度を思い出して、里香は少しだけ理解した気がした。相手が焦っているのに、自分はまるで傍観者のように見ている感じだ。

「今すぐ病院に来てくれ、話したいことがある」

雅之はそう言うと、電話を一方的に切った。命令的で冷たい口調で、拒否する余地をまったく与えなかった。

里香は眉をひそめ、切れたスマホを見つめた。この人、何が気に入らないの?

話もせずに、どうして「来い」なんて言われて行かなきゃならないの?

里香はスマートフォンをバッグにしまい、病院に行くつもりはなく、会社に戻って仕事を続けるつもりだった。さっきマネージャーと対立したばかりで、きっと怒り狂っているに違いない。給料をかなり引かれるかもしれないし、それを取り戻さなければならない。

会社の下に着くと、遠くに東雲が立っているのが見えた。無表情な顔で、彼はすぐに里香を見つけた。

里香はまるで何か恐ろしいものに見つめられているような気がして、背筋が冷たくなった。

「何か用ですか?」

里香は近づいて眉をひそめて尋ねた。

「小松さん、社長があなたに用があるそうです。こちらへどうぞ」

そう言って、東雲は手を差し出し、その態度は非常に強硬だった。

「行きたくないです。何かあれば電話で話せばいいでしょう」

「電話ではうまく説明できないと思います、小松さん。できれば暴力は使いたくないので、困らせないでください」

東雲の冷たい目を見て、里香は急に不安になった。雅之がわざわざ呼び出すなんて、一体何の用だろう?

里香は唇を噛み、東雲の車に乗り込んだ。東雲は無言で車を運転し、病院へ直行した。

道中、里香は何度も何が用なのか尋ねたが、東雲は一言も答えず、その顔色はどんどん冷たくなっていった。

まるで里香が何か大きな借金でも抱えているかのような態度だ。

一体何が気に入らないの?

話もしないで、そんな冷たい態度を取るなんて、本当に失礼な男だ。

病院に着くと、病室の入口には二人の警備員が立
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