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第168話

里香の目が冷たくなり、「証拠はあるの?」と問いかけた。

夏実は「雅之があなたの作った料理を食べて中毒になったんだから、証拠なんていらないでしょ」と言った。

里香は「その料理、彼が自分で買ったものよ。あなたの理屈で言えば、彼が自分で毒を盛って私に罪を着せたってことになるんじゃない?」と返した。

「あなた!」夏実の顔が険しくなり、「それは無理があるわ!」と怒った。

里香は「あなたの言い分よりは筋が通ってるわよ」と冷ややかに言った。

二人の間に緊迫した空気が流れた。

「もうやめて!」

そのとき、雅之が口を開いた。彼の美しい顔は険しく、冷たい目で里香を見つめながら、「僕がどうして君と離婚しなきゃいけないか、分かってるだろう?里香、悪いことは言わないから、早くサインして…」と続けた。

「嫌だって言ったら?」

里香は雅之をじっと見つめ、かつて愛していた男を目の前にして、心の中で嘲笑していた。

「私を殺すつもり?」

里香の軽やかな声は、まるで羽のように雅之の心に届いたが、彼はなぜか苛立ちを覚えた。

離婚したいと言ったのは里香なのに、今さら何を言っているのか?

雅之は少し低い声で、「離婚の条件に不満があるなら言ってくれればいい」と言った。

指がわずかに震えたが、里香は冷静を装いながら、「この事件が解決するまでは、私はあなたと離婚しない」と言い放った。

雅之の眉が険しくなった。

横から夏実が「小松さんがどうしても離婚しないというのなら、法的手段を取るしかないわね」と言った。

「すでに警察に通報しているわ。検査結果が出たら、後悔するがいい」と里香は冷たく返した。

その言葉に夏実は一瞬驚き、目が揺らいだ。

雅之は夏実に「先に帰ってくれ」と静かに言った。

夏実は心配そうに「でも…」と迷った。

「大丈夫だ」

雅之は夏実を安心させるように見つめた。

夏実は立ち上がり、病室を出て行った。

雅之は彼女が去るまで目をそらさなかった。

里香は彼をビンタしたい衝動を抑えきれなかった。

そんなに名残惜しいのか?

そんなに彼女が好きなのか?

じゃあ、私は一体何なの?

里香は椅子を引いて座り、澄んだ目で雅之を見つめた。

雅之は眉をひ
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