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第159話

「いらない」

雅之は目を閉じたまま、弱々しくつぶやいた。「彼女には会いたくない。でも、里香は俺の妻だ。もし彼女が捕まったら、二宮家の名誉に傷がつく」

正光は冷たく鼻を鳴らした。「今さら、まだお前を殺そうとした女を庇うつもりか?」

由紀子が横から口を挟んだ。「雅之、これって何かの誤解じゃない?私は里香がそんなことするとは思えないわ」

雅之はそれ以上何も言わなかったが、その態度ははっきりしていた。

里香は拳を握りしめ、雅之の顔をじっと見つめた。深呼吸してから、静かに言った。「私は毒なんか盛ってない。雅之、もし将来あなたが誤解していることに気づいたとしても、私は絶対に許さない」

そう言い残して、里香は振り返り、病室を後にした。

雅之の手は布団の下で、ぎゅっと握りしめられていた。

その時、夏実が入ってきて、里香が真っ青な顔で出て行くのを見て、不思議そうに尋ねた。「何があったの?」

由紀子はため息をついて答えた。「ああ…雅之が言うには、里香が彼に毒を盛ったらしいの」

夏実は驚きで目を大きく見開いた。「それ、本当なの?」

正光がすかさず言った。「雅之、体が回復したらすぐにその女と離婚しろ。お前は夏実と結婚すべきだ。それで早く子供を作って落ち着けば、こんなことも起きないだろう」

夏実は目を瞬きさせて、「おじさん、雅之はまだ弱ってるんだから、こういう話は後にしましょう」と言った。

雅之は言った。「少し静かにさせてくれ」

正光は少し考えてから、「わかった。じゃあ、先に帰る。後でまた来る」と言い、由紀子と共に病院を出て行った。

夏実がベッドのそばに座り、「雅之…」と声をかけようとしたが、

「君も帰った方がいい」

雅之が突然言い、夏実の言葉を遮った。

夏実は唇を噛みしめて立ち上がり、「じゃあ、私も後でまた来るね」と言い残して部屋を出た。

夏実が去った後、病室には雅之と車椅子に座った月宮だけが残った。

「雅之、本気でそう思ってるの?」

月宮は複雑な表情で彼を見つめ、しばらくためらった後に尋ねた。

雅之は静かに答えた。「彼女の作った料理を食べたら中毒になったんだ。君なら誰が一番疑わしいと思う?」

月宮は眉をひそめた。「確かに、彼女が怪しいとは思うけど、そんなこと言ったらダメだよ。彼女の顔色を見た?いつ倒れてもおかしくないくらいだ」

雅之は低い声
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