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第162話

かおるは月宮をちらりと見て、不思議そうに「あなた、そんなに優しいの?」と尋ねた。

月宮は何も言わず、ただ微笑んでかおるを見つめ続けていた。

かおるは少し考えた後、気持ちを落ち着けた。今は、里香の名誉を取り戻すことが一番大事だ。もし月宮が本気で協力してくれるなら、状況が好転するかもしれない。

「手伝うわ」

かおるは月宮の乱れたベルトが気になり、近づいてしゃがみ込み、細い指でそれを結び直し始めた。

かおるが近づくと、彼女の淡い香りがふわりと鼻をくすぐった。月宮は彼女の顔をじっと見つめながら、ふと口を開いた。「君、芸能界に向いてると思うけど、どう?」

かおるはベルトを結び終え、一歩後ろに下がりながら答えた。「私は芸能人になるつもりはないわ」

かおるが離れると、その香りも消えてしまい、月宮の胸の奥にどこか寂しさがこみ上げてきた。

月宮は一瞬目を光らせ、続けて言った。「俺はいつでも君を歓迎するから、考えが変わったら言ってくれ。半年以内に君を国内一流のスターにしてみせるよ」

かおるは微笑んで、「気持ちだけ受け取っておくわ」と軽く答えた。

一方その頃、里香は警察署に行き、食事の検査結果を確認しようとしていた。

自分もあの食事を口にしたのに、どうして自分だけ中毒にならなかったのか、不思議でならなかった。

しかし、警察署に到着すると、まだ検査結果は出ていないと言われた。

里香はがっかりして外に出ると、すでに空は暗くなり、雲が重く空を覆いかぶさり、まるでその重みが心にのしかかるようだった。

心がどんよりと沈んでいく中、里香はぼんやりと道端を歩いていた。

その時、背後からバイクのエンジン音が迫ってきた。

「危ない!」

突然、誰かが里香の腕を引っ張り、横に引き寄せられた。バイクは彼女のすぐ横を猛スピードで通り過ぎた。もし間一髪で引き寄せられていなかったら、確実にぶつかっていただろう。

「ありがとう…」

驚きながら振り返ると、そこにいたのは祐介だった。

「祐介さん?」

祐介は少し眉をひそめていて、また髪色が変わっていた。今回は真っ白な髪で、その妖艶で精悍な顔立ちが際立って見えた。短くカットされた白髪は、まるで漫画から抜け出してきたかのように魅力的だった。

「どうしたの?歩きながらぼんやりしてるなんて」

祐介は疑問げな目で里香を見つめた。

里香は
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