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第150話

里香は冷たく視線をそらし、振り返らずに歩き去った。

かおるは急いで後を追い、「里香ちゃん、ついにやったね!」と親指を立てた。

里香は「私はやられたらやり返すタイプだからね」と答えた。

山崎が自分から挑発してきたんだから、叩きのめされるのは当然。里香は遠慮しなかった。

かおるは「へえ」と感心しつつ、「あのクソ男、夏実を本当に愛してるなら、どうしてあなたと離婚しないのかしらね?今、夏実はうつ病になってるし、あなたも辛い思いをしてるのに、あいつは何がしたいんだろう?」と疑問を投げかけた。

里香は「彼が何を考えているか分かればいいんだけど」と呟いた。

そうすれば、こんなに苦しむこともないのに。

いつまでもこんな風に絡まっていて、何の意味があるんだろう?

かおるは里香の腕を組み、「里香ちゃん、今夜うちに来てよ。明日からは自由がなくなるから」とにこやかに言った。

里香は頷き、すぐに承諾した。

かおるは大喜びだった。

かおるの住む小さな1LDKのアパートは、一人暮らしにちょうどいいサイズ。かおるはレトルト食品を買ってきて、二人でバラエティ番組を見ながらビールを飲み、簡単な料理を食べた。

短いけれど幸せなひとときだった。

深夜。

里香がうとうとしていると、突然スマホが鳴り響いた。かおるが先に気づいて、彼女を揺り起こした。

里香は目を細めてスマホを見た。雅之からの電話だった。

このクソ男、真夜中に何の用だ?

出る気なんてないし、里香は電話を切った。

カエデビルで、雅之は里香のいない空っぽの部屋を見つめ、電話が切れたことに顔をしかめた。

里香はどこに行った?

雅之は東雲に電話をかけ、低い声で命じた。「里香がどこにいるか調べろ」

東雲は一瞬ためらい、「社長、もう午前1時ですけど…」と答えた。

「だから何だ?」

雅之は冷たい口調で返した。

東雲は沈黙し、仕方なく起き上がって行動を調べ始めた。

10分後、東雲は里香の位置情報を雅之に送った。

雅之は里香がかおるの家にいることを知り、細長い瞳を細め、すぐに月宮に電話をかけた。

「もしもし?」

月宮のぼんやりとした声が聞こえた。

「明日の夜、かおるを君の家に泊めて」

「お前、頭おかしいんじゃないの?」

雅之は冷たい口調で言った。「ベッドで半年間寝てもいいのか?」

月宮はため息をついて
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