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第156話

そう言い終わると、正光は激しく咳き込み始めた。

由紀子は彼の背中をさすりながら、「落ち着いて、まだ調査は終わってないんだから、もう少し待ちましょう」となだめた。

里香はただ病床の雅之をじっと見つめていたが、ボディガードが入ってきて彼女を無理やり引きずり出した。

病室のドアが彼女の目の前で閉まった。

「里香ちゃん!」

月宮を見送ったかおるが戻ってきて、里香が追い出されているのを見て、胸が痛んだ。

里香は「大丈夫」と言ったが、かおるは心配そうに彼女を抱きしめ、「私はここで一緒に待ってるから」と言った。

里香は首を振り、「いいよ、先に帰って。月宮さんの世話が大変でしょ?彼を不機嫌にさせちゃったら面倒だし」と言った。

かおるは唇を噛み、「大丈夫、もう子供じゃないんだから、一人でも死にはしないよ」と返した。

里香は微笑んで、「お願いだから、言うこと聞いて?」と言った。

かおるは目に涙を浮かべ、「里香ちゃん、ずっと一緒にいたいのに」と訴えた。

里香は優しく、「雅之がまだ目を覚ましていないから、今何をしても無駄だし。私は大丈夫だから、もし何かあったらすぐ連絡するから」と言った。

かおるはそれを聞いて、もう無理に引き留めるのを諦め、「絶対に連絡してね」と言った。

「うん」

かおるが去っていくのを見送りながらも、里香の表情は依然として緊張していた。

彼女の視線は再び病室のドアに向かい、心の中の不安と焦りが抑えきれずに浮かんでいた。自分でも気づかないうちに、手が微かに震えていた。

その時、ざわざわとした足音が聞こえてきた。

「どいて!」

反応する間もなく、強く押されて壁にぶつかった。

山崎は憤りに満ちた目で里香を睨みつけ、「お前が毒を盛ったんだろう。離婚を拒否した雅之に!」と叫んだ。

夏実が焦った様子で、「真央、もうやめて、まずは雅之の様子を見に行こう」と言った。

夏実の顔はまだ青白く、焦りがにじんでいた。

山崎は里香を冷たく睨み返し、「雅之が目を覚ましたら、必ずお前に責任を取らせてやるからな!」と吐き捨て、二人は病室に入っていった。

里香は壁に寄りかかり、顔から血の気が引いていくのを感じた。

突然、雅之が昏睡する前に彼女を見つめた冷たい視線が脳裏に蘇った。

あの視線は、氷のように冷たく、まるで殺意が込められているかのようだった。

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