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第153話

里香の表情は一瞬で冷たくなった。「お願いだから、何かトラブルを起こすのはやめて。せめて、私たちが離婚した後にしてほしいの」

そう言って、里香はカートを押しながらその場を離れた。

雅之はそんな彼女の背中を見つめ、唇の端が冷たく歪んだ。

里香は野菜コーナーに向かい、野菜を選んでカートに入れた後、お菓子コーナーへと進んだ。

すると、ある棚の角を曲がったところで、一人の女の子が急いでカートを押してやってきて、里香のカートにぶつかってしまった。二人のカートはひっくり返り、買ったものが床に散らばった。

「すみません!ごめんなさい!」

女の子は申し訳なさそうな顔で、急いで物を拾い始めた。

里香もしゃがんで手伝いながら、淡々と「ここは人が多いから、もう少し気をつけた方がいいよ」と言った。

「はい、気をつけます…」

二人はすぐにカートに物を戻した。その時、雅之も追いついてきた。

女の子はそれに気づくと、慌ててその場を立ち去った。

「何かあったのか?」

雅之は眉をひそめ、低い声で里香に尋ねた。

里香は「何でもないよ。他に買うものは?なければ帰ろう」と答えた。

「うん、もうない」

雅之はそう言った。

二人はレジに向かい、雅之は慣れた手つきで財布を取り出し、数枚の紙幣をレジの店員に渡した。

里香はただ横で見ているだけで、特に割り込もうとはしなかった。

どうせ雅之が食べるものだし、材料は自分で買わせるのが当然だと思った。

カエデビルに戻ると、里香はまっすぐキッチンに向かい、料理を始めた。

雅之もついて来たが、里香は「邪魔だから出て行って」と冷たく言い放った。

雅之は不満げに「前は手伝ってたじゃないか」と言ったが、里香は振り向きもせずに、「昔のあなたは良いところがたくさんあったけど、今は何が残ってるの?」と返した。

雅之は薄い唇を引き結び、その場の空気が一気に重くなったように感じたが、何も言わずにその場を離れた。

里香は深呼吸し、心の中で湧き上がる酸っぱさを必死に抑えた。

どうしていつも昔のことを持ち出すの?

昔に戻れるの?

戻れない。

里香は徐々に冷静さを取り戻し、野菜を洗い、切り、手際よく料理を作り始めた。

40分後、4品とスープ1品が食卓に並んだ。

里香はエプロンを外し、淡々と「食事の準備ができたよ」と言った。

食べ終わったらす
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