第3話

「えっ」。伊吹嵐は呆然としていた。

「ぼーっとして何してるの？私を知らないの？さっきまで会ったばかりよ」

東田智子は伊吹嵐が動かないのを見て、眉をひそめ、さらに彼の手を引き、直接ベントレーに乗り込んで行った。

周囲の人々は驚いて口をあんぐりとあけて、騒然とした。

この背景のある美人が、なんと伊吹嵐を探しに来たのだ。

若生玲子はきょとんとして、困惑していた。

なぜこんな臭いダサい奴が？どうして？

若生花子は非常に驚き、言葉を失い、霊魂を抜かれたようだった。

「伊吹さん、あなたの息子は…もう大金持ちに身を委ねていたのね！それでも付き合いに来て、私たちをおちゃらかすのだか」

伊吹裕子もまた頭が混乱していた…

自分の息子がこのクラスの女性と知り合いなのか？

…

ベントレーはしばらく走った後、途中で停車した。

東田智子は黒ストや深いVネックのドレスを着て、あまりにも目立っていた。

助手席の伊吹嵐は視線を意識的に避け、少し気まずそうに言った。

「東田社長、遠くから私を探しに来てくれたんですか、何のご用ですか」

パチンと

彼の言葉が終わらないうちに、東田智子は平手打ちをしてきた。全く容赦がなかった。

「厚かましい！浅ましい」。彼女は歯を食いしばって言った。

伊吹嵐はそれほど痛くなくて、顔を押さえながら苦笑いして言った。

「東田社長、その時、私はただ人を救おうとして焦っていただけで、あんまり考えなかったんです。本当に申し訳ありません！もしお気に召さなければ、どうぞ私を打っても解雇しても構いません」

彼はこの女性が自分を探しに来たことを見て、大事になると気づき、きっと仕返しに来たのだろうと思った。

やはり、老虎のお尻を触るのはよくない（この俗語の意味はある人は犯られることを許さないことだ）。なおさら、東田智子のお尻を触った。

東田智子はこの状況を見て、上げた手が突然止まった。

彼女は冷たい表情で言った。

「君の名前は伊吹嵐だね。会社の営業部のインターンだね」

「はい」

「今、君に何かをさせることがあるよ。それを成し遂げたら、以前のことを問わないし、正式採用もしてあげる」と東田智子は高慢そうに言った。

「東田社長、私にやらせるべきことがまだありますか？私の体で治療を続けさせるつもりですか」

伊吹嵐は惑いを感じ、彼女の鎖骨に目を落とし、この前に残った傷跡を見つけた…

東田智子はかんかんに怒り、殺気に満ちた目を持ち上げた。

「黙れ、もうそのことを口にだしたら、すぐに車から出て行け。会社にも来るな。

「今、1時間だけ私の婚約者になってほしいの」

東田智子は断固とした口調で言った。

伊吹嵐は驚きのあまり、聞き間違えたかと思った。

「なぜですか」

婚約者、それも1時間だけのだ。

まさか、さっきの後遺症がまた出て、東田社長が正気を失ったのか？

「理由を知る必要も、尋ねる資格もないわ。私が言うことに従うだけでいいのよ」

東田智子は高慢な態度で顎を引き上げ、まるで女王のようだった。急にアクセルを踏んでベントレーを遠くに走らせた。

…

東田智子が去った後、その影響は徐々に消えていった。

テーマレストランもまた平穏を取り戻し、若生玲子たちも去っていった。

しかし、その時、三台の千万円の高級車が門の前に並んだ。

多数の黒服のボディーガードが追い掛けて、見栄は非常に壮大だった。

3人の男性がゆっくりと出て、じっとりとして威厳があった。

まるで深海爆弾のように、会場全体が沸き立った。

「函館市の知事である中村将彦だ」

「函館市の首富である高藤誠だ」

「函館市の地下組織の主宰者である西坂和男だ」

「この3人、くしゃくしゃを一つでもすると、函館市は10級地震を引き起こすかもしれないような存在だ」

函館市の三巨頭、今日は一堂に会している。百年ぶりに珍しい光景だ。

この三人と比べれば、東田智子は取るにたりなかった。

「やはり一歩遅れてしまったようだ。冥王閣下はもう去ってしまった。本当に残念だ」

3人は互いに見つめ合い、各自の心の中で良く分かってるんだ。

普段、三巨頭が犬猿の仲で、今日は1人の男性のためにわざわざここに駆けつけてきた。