第9話

私は自嘲的に笑って言った。「用事があるなら行って」

太一は電話に出て、顔色が変わり、その後迷わずに振り返って去って行った。

莉奈がドアのところで彼を叱った。「あら、もう行っちゃうの？」

「行ったなら、もう二度と来ないで！」

私は太一にラインを送った。「月曜日の朝8時、町役場の前で。遅れないでください」

送信後、彼を削除し、すべての連絡先をブロックした。

16

月曜日、その日は気分が良く、わざわざ軽いメイクをして、莉奈に髪を編んでもらった。

鏡の中に映る若返った自分を見て、私は微笑んだ。

ぼんやりしているうちに、大学時代の活力に満ちた頃に戻ったような気がした。ただ、その頃の私には太一に会っていなかったことは確かだ。

8時に町役場に時間通りに到着した。陽介が車の中で私を待っていた。

太一は離婚届けを握りしめ、町役場の入り口で頭を垂れて立っていた。声が聞こえると、彼は顔を上げた。

私は数日会っていなかったことに気づき、彼が随分と疲れた様子で、クマがひどく、顔色が青白く、唇が青白く、目が虚ろだったことに気づいた。私とはまったく対照的だった。

彼のそばには美咲もいて、数ヶ月が経ち、彼女のお腹は妊娠しているのが分かった。彼女は太一の腕を掴もうとしたが、太一は避けた。

彼女は頑固に太一のそばに立ち、私に挑戦的に眉をひそめた。

でも、それがどうだっていうのだろう。私はもう気にしていなかった。

太一は慎重に口を開いた。「美琴、本当に離婚しなければならないの？」

私は頷いた。

彼は諦めずに言った。「君の体調が良くないから、僕が君の面倒を見られる。離婚しないでくれないか？」

私は前を見ながら首を振って言った。「大丈夫、誰かが面倒を見てくれるから」

車の中の陽介は私の視線に気づき、手を振った。

私は微笑んで言った。「早くして、すぐに列に並ぶから」

太一はしょんぼりしながら私の後ろについてきた。

離婚手続きはすぐに終わり、スタッフが真剣に調整してくれたが、彼女が何を言っても、私は微笑みながら頭を振って拒否した。

スタッフはため息をついて言った。「こんなに固執しているのを見たのは初めてだ」

幸い、当時は離婚の冷却期間が不要で、外に出ると、私は太一と一人一枚ずつ離婚証明書を持っていた。

私は振り向いて歩き出そうとしたが、太一が私を止めた。「君は