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第8話

他人に笑われるのは気にしない。浮気して過ちを犯したのは俺じゃないし、彼女たちの代わりに恥ずかしがる必要もない。ここまで話が進んだのだから、すべて説明した方がいいだろう。

そこで一言、「それと、中島社長、お手数ですが、息子さんを早めに迎えに来てください」

美雪はこの数日、自分のことに手いっぱいで、子どもを佐々木家に預けたまま身を隠していた。彼女は一円たりとも佐々木家という底なし沼にお金を注ぎたくないようだ。

佐々木の母はまだ健一が私の子ではないことを知らない。毎日電話をかけてきて、私に子供を迎えに来るようにと言ってくる。

健一に対して全く感情がないわけではないし、実際に別れるのは辛い。だが、私たちには父子の縁がないのは事実だ。苦しみが長引くよりは、早めにけじめをつけた方がいい。

彼が大人になって私を恨むなら、無責任な母親を恨めばいいさ。

最後の言葉を終えた後、周りの人たちがどんな表情をしているか気にせず、優子に感謝の眼差しを送り、振り返ってその場を離れた。

彼女は大騒ぎにしなくても良かったのに、これは私が真実を伝えたことへの感謝の意味だったのだろう。

8

美雪が役所に駆け込んだ時、かなり狼狽しているように見えた。

私を見るなり、厳しい声で詰め寄ってきた。

「裕司!あんただったんでしょ、あんた、最初から全部知ってたのよね!」

「何のことだ?」

八年間愛してきたはずだが、こう詰め寄られても私の心は驚くほど静かだった。

愛もなく、憎しみもない。過去の自分が愚かだっただけだ。今後どんな結果になろうと、それはすべて美雪自身が招いたものだ。

ただ、数日前に優子から聞いた話を思い出した。彼女は佐久が会社の金を横領した証拠を握っていると言っていた。

この先、佐久は彼女に告発されるだろう。

彼が美雪に渡したお金もすべて取り戻される。私もいなければ、佐久もいなくなる。これからは子供と二人、決して楽な道ではないだろう。

美雪もこれからのことを考えていたのだろう。

私が彼女を見つめても、何も感じていないことに気づき、ようやく後悔したようだ。

「裕司、お願い、離婚しないで。私が悪かったわ、どうかもう一度チャンスをちょうだい。健一も......あなたを本当のお父さんだと思っているのよ。それでもいいの?」

「美雪!裁判沙汰にするより、すんなり離婚した方がい
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