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第7話

俺という金づるがいなくなり、美雪も何もしないとなれば、正宏は俺に借金を返せず、裁判所が彼の名義の家を差し押さえることになる。

佐々木父と佐々木母もついに事態の深刻さに気づき、会社まで押しかけてきた。

佐々木母は泣き叫び、まるで駄々っ子のように会社のロビーに座り込み、俺を罵った。

「お前は卑怯者だ!」と俺の非を次々と挙げ、「妻子を顧みず、親を敬わない。私の息子を破滅させたのもお前だ!」と。

ちょうど昼休みの時間だったため、会社の前には見物人が集まり、社員たちが冷ややかな目で俺を見ていた。

「彼ってそんな人だったの?」

「本当に信じられないね」

「あんな冷酷な男がどうして部長になれたのかしら?」

俺が反論する間もなく、副社長の佐久が通りかかり、状況を簡単に聞くと、すぐに怒りの表情を見せた。

「裕司は停職だ。家庭の問題を解決してから戻ってこい。会社は私生活が乱れている社員を許さない」

彼の正義感に満ちた対応に、社員たちは拍手を送った。

人が散っていった後、佐々木母は得意げに立ち上がり、俺に向かってこう言った。

「よく考えなさいよ。お金を取るのか、それとも仕事を取るのか」

7

停職はそれほど気にしていなかった。実際に、俺が美雪に話していたプロジェクトは本当のことだ。

高校の同級生とは孤児院時代からの仲で、非常に親しい関係にある。そのプロジェクトも長い間検討していたものだった。もし昇進がなければ、すでに辞職するつもりだったのだ。

だが、解雇されるのは違う。こんな不名誉な形で会社を去るわけにはいかない。

佐々木母が会社まで騒ぎに来たということは、彼女は美雪がどれほどの貯金を持っているか知らないということだろう。

そんなのは放っておけない。

その日のうちに、美雪の銀行口座の残高を匿名で正宏に送った。振込履歴も親切に添えて。

佐々木家でどんな騒ぎになったのかは知らないが、もう美雪は俺に連絡している暇などなかった。なぜなら、優子から彼女が動き出す準備をしているとの連絡があったのだ。

俺は珍しく時間ができたので、売った家の代金を持って、すぐに新しい住居を探し、環境の良いマンションに頭金を払った。

そして、自分好みに設計してくれるリフォーム会社に依頼し、さらにパーソ
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