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母の手で解剖された私 - 父が追った犯人に殺されて
母の手で解剖された私 - 父が追った犯人に殺されて
著者: 宫本霞月

第1話

私の遺体は廃墟となった建設途中のビルで発見された。

作業員は激しい嘔吐を繰り返しながら、震える手で警察に通報した。

父と母は、静香の打ち上げパーティーから急いで現場に駆けつけた。

鑑識官は眉をひそめ、二人にマスクをするよう促した。

父は警察の外部捜査官として名高く、母は霞ノ原市で一番の法医だ。

数多くの凶悪事件を目にしてきた二人ですら、目の前の光景にわずかに動揺を見せた。

真夏の酷暑で、遺体は膨張し、顔は殴打されて原形を留めず、目鼻立ちすら分からない。

全身に無数の傷跡があり、首にかろうじて皮膚がつながっているだけの状態だった。

腐敗が進み、鼻を突く強烈な悪臭が漂っていた。

母は目を閉じ、深く息を吸い込んでから手袋をはめ、遺体の簡単な検視を始めた。

彼女の目には、私に対するわずかな同情が見て取れた。

生きている間、母のこんな温かい眼差しを受けたことは一度もなかったのに。

私は緊張しながら、母が私の指から血まみれの指輪を外すのを見つめていた。

この指輪は、家族全員に手作りしたもので、静香の指にサイズが合わなかったため、

両親に怒鳴られた。

「お前はいつも妹をいじめることばかり考えている!」

「桜子(山口桜子)、お前は私たちの実の娘かもしれないが、静香はこの家で18年も暮らしている。彼女の方がずっと大事なんだ!」

あの時の激しい叱責が今も耳に残っているが、それでも私は、両親が私を愛していると

信じていた。

きっと、私が贈った指輪を見ればわかってくれるはずだ!

だが、母は何の感情も見せず、ただアシスタントにその指輪を証拠品袋に入れるよう指示しただけだった。

私は期待すべきではなかった。両親の心には、私の存在は最初からなかったのだ。

たとえ私が実の娘であったとしても。

兄は言っていた。両親が静香を養女にしたのは、私が誘拐されて見つからなかったから

だ。彼らが一番愛しているのは、やはり私だと。

しかし、家に戻った時、私の居場所はもうどこにもなかった。

まるで私が他人の家を横取ったかのように感じた。

父は現場の捜査を終えると、ため息をつき、母に尋ねた。「この遺体、どうだ?」

母は手袋を外し、こめかみを揉みながら答えた。「遺体はおそらく20歳前後。死因は首を切られたことによるものだと思われる。生前、長時間にわたって暴行を受けていたようね」

「犯行手口は非常に残酷で、社会的な影響も大きい。世間が騒ぎ出す前に早急に解決し

なければならないな」父は煙草に火をつけ、深く一息ついた。何かを思い悩んでいるようだった。

私が死んだ後も、両親に迷惑をかけてしまっている。

鑑識官が忠告した。「まだ犯人は捕まっていない。家族も気をつけた方がいい。娘さんが二人いるんだし、夜は外に出さない方がいいよ」

母は面倒くさそうに言った。「静香はいつも言うことを聞くけど、桜子はね、あの子は私には手に負えないわ」

その鑑識官は、両親の旧友だったので、我が家の事情もよく知っていた。

父は右肩を軽く押さえながら、ため息をついた。

鑑識官がその動作に気づいて尋ねた。「また肩が痛むのか?」

父は首を振って答えた。「いや、平気だ。桜子が買ってくれた湿布を貼っているからな……」

そう言いながら、ふと黙り込んだ。

彼らが「言うことを聞かない」と口にする娘は、実は両親の健康をいつも気にかけていたのだ。

鑑識官は父の背中を軽く叩きながら言った。「桜子をもっと大切にしろよ。彼女こそ、

あなたたちの実の娘なんだから」

父は首を横に振りながら答えた。「先日、静香ちゃんのテニスの試合があるから桜子に来てほしいってずっと言ってたんだよ。でも、あいつは電話に出たくせに無視しやがった。静香ちゃんは姉が来てくれるのを待ってたのに、失望して結局3位止まりだった」

「桜子はもう何日も家に帰っていない。死んでても分かんないよ。。やっぱり育ての

親が違うと駄目だな」

両親のその言葉を聞き、私は氷のように冷たく感じた。

父さん、母さん、私は家に帰りたくないわけじゃない。

ただ、もう帰ることができないんだ。

あなたたちが「裏切り者」と呼ぶ娘は、静香のテニスの試合の日に、すでにこの世を

去ってしまったのだから。

私の遺体は、今、あなたたちの目の前にあるというのに……。

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