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第4話

母は胃酸で腐食された紙片を鑑識官に手渡し、疲れた様子で少し腰をさすりながら、父にため息混じりに言った。「この紙切れで何かわかるといいけど……。静香にはちゃんと家の鍵を閉めるように言っておいたの?」

父は険しい表情でうなずいた後、少し躊躇しながら口を開いた。「おい、桜子が電話に出ないし、元気君のメッセージにも返信しない。何かあったんじゃないか?調べてみた方がいいかも……」

母は苛立ちを隠せずに言葉を遮った。「もう、あの子のこと分かってるでしょ?どうせどこかに隠れて、私たちが探し回るのを待ってるだけ。これまでも何度かあったでしょ?」

「静香の試合に行きたくないだけよ。明日には泣きながら謝りの電話をかけてくるに違いないわ」

最後に私が「行方不明」になったのは、夏休みに静香に学校のトイレに閉じ込められた時だった。

休み中の学校は静まり返っており、誰にも私の叫び声は届かない。

必死で這い上がり、泥だらけで足をひねったまま家にたどり着いたが、私を待っていたのは父の大きな平手打ちと母の罵声だった。

「静香が、あんたが不良と一緒にラブホテルに行ったって見たって言ってるのよ!なんて恥知らずな娘を産んだのかしら!」

私は何も言い返せなかった。ただ、静香が隠れて得意げに笑っているのを見つめるしかなかった。

兄が私に薬を塗りながら、優しく言った。「お父さんとお母さんが君を愛してないわけじゃない。ただ、どう接すればいいのか分からないだけだよ」

でも、私は分かっていた。口下手な私と、頭の良い静香を比べれば、親の愛情はどちらに傾くかは明らかだということを。

家族の愛情の天秤は、いつも静香の方へと傾いていた。

私ではなく、彼女が両親にとって「最愛の娘」なのだ。

だから、たとえ今生きていても、私は両親が仕事で忙しい時に警察署に栄養スープを届けるぐらいしかできなかっただろう。

でも、今はもうその機会さえも失った。

だって、私はもうこの世にいないのだから。

鑑識の結果はすぐに出た。紙片は買い物のレシートだった。

犯人は私を苦しめるために、無理やりその紙を口に押し込み、「お前、親に買ったんだろ?どうせ捨てられるだけだぞ」と嘲笑っていた。

父は不審そうに言った。「これ、どこの店のレシートだ?」

鑑識官は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに応えた。「平安符や福袋を売ってる店で
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