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第6話

検視官も目に涙を浮かべながら言った。「ひとまず警察署に戻ってください。進展があれば副隊長と私で連絡します」

しかし、母はそれを聞いていないかのようだった。手袋をしたまま、床の血痕をそっと撫でながら呟いた。「桜子はどれほどの痛みを感じたのかしら……」

感情を抑えきれずに、警察官はすでにすすり泣いていた。

両親はすっかり打ちひしがれ、ぼんやりと車に乗り込んだ。

二人のうつろな表情を見ていると、胸が締め付けられる思いだった。

生きていた頃から、両親が「桜子」と呼んでくれたことなど一度もなかったのに。

検視官の佐藤さんが検査報告書を父に手渡すと、彼女は哀れみの視線を一瞬、母に向けた。「伊藤さん、御愁傷様」

父の瞳孔は瞬時に縮み、何度も名前を確認しながら報告書を見つめ直した。

しばらくして、彼は歯を食いしばりながら絞り出すように言った。「そんなはずはない……」

佐藤さんはため息をつきながら、父の肩に軽く手を置いた。「伊藤さん、もう現場も確認したし、遺体も解剖室にあるんです。こればかりは、間違いようがありません」

突然、母は前に飛び出し、検査報告書を引き裂いた。

そして何かを思い出したように、遺体から外した指輪を取り出した。

透明な証拠袋の中に入った指輪を見つめ、その内側に刻まれた「LS」の文字に母の涙がぽたりと落ちた。

警察の話では、指輪の刻印が遺体の名前を示しているのだろうとのことだった。

しかし、実際にはそれは私が夢見ていた名前、伊藤家に戻った後に自分が名乗りたかった名前だったのだ。

父は母を支えながら、足元もおぼつかない様子で解剖室へと向かい、そこで目にしたのは無残に傷ついた私の遺体だった。

その瞬間、父の喉から、苦しげなうめき声が漏れた。

どうして彼らはそんなにも苦しんでいるのだろうか?

私がいなくなることは、ずっと望まれていたはずなのに。

母は私の背中に残る火傷の跡にそっと触れ、震える声で話しかけた。

「桜子、こんなところであなたに会うなんて、母さんには想像もつかなかったよ……」

「家に戻ってきた頃のあなたは、黒くて痩せこけていて、まるで男の子みたいだった。あの時、父さんと話してたんだ。『この子、ちゃんと太らせて健康に育てないといけない』って」

「でも、どうしてこんな風になっちゃったんだろう?あなたが悪さばかりして、私
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