第5話

母はまるで悪い予感がするかのように、父の腕を掴み、その指は彼の腕に食い込んでいた。

「死者は、あなたたちの娘、桜子さんです」

母はその場に崩れ落ち、信じられないように繰り返した。「桜子？そんなはずないわ……」

父はすぐに母を支え、彼女が完全に倒れないようにした。

チームの若い警官が静かに言った。「伊藤さん、現場が見つかりました。廃墟の近くの自作の家です」

父は迷わず指示を出した。「すぐに現場に向かうぞ。鑑識はきっと何か間違えてるんだ」

パトカーの中、母は繰り返し私の番号を押して電話をかけ続けた。

父は無言で車を運転しながら、「心配するな、桜子はどこかで検査員とグルになって、俺たちをからかってるだけかもしれない」と口に出したが、その顔には明らかに不安が浮かんでいた。

彼だって、こんなことが冗談で済むわけがないことを知っているはずだ。

体中に冷たい毒蛇が巻きつくような息苦しさを感じながら、私は次第に自分の状況を実感していた。

その自作の家がある地域は、怪しげな人物が集まる場所だった。

住民の中には身分証すら偽造している者もいて、警察の捜査を恐れることなく暮らしていた。

両親が現場に到着すると、すでに家の前には警察の立ち入り禁止テープが張られていた。

家のドアが開かれると、すぐに鼻を突くような血の匂いが漂ってきた。

ベッドのシーツは血に染まり、壁にも床にも飛び散った血痕が無数に残っていた。

私は霊となってすら、その場で震えが止まらなかった。生前、ここでの拷問が今でも私を苛んでいた。

あの日、静香から電話がかかってきた。

彼女は「足を怪我して、明日の試合に影響が出るかも」と言っていた。

彼女があまり好きではなかったが、それでも両親に心配をかけたくなかったので、彼女の元に向かった。

だが、現場に到着した瞬間、私は背後から何者かに殴られ気を失った。

目隠しが外された時、目の前には静香と不気味に笑う見知らぬ男がいた。

その男が誰なのかは分からなかったが、静香が発した言葉が私の全身を凍りつかせた。「彼女を騙して連れてきたわ。これで私を解放してくれるんでしょ？早くしないと、あのクソ親たちにまた追い詰められちゃうわ」

その男は彼女の言葉を聞き、顔を歪めたが、軽く手を振りながら「黙ってろ」と呟いた。

静香は冷たい笑みを浮かべながら部