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第009話

小鳥はレストランで大声で自慢げに話し、まるで自分が大金を手にしている未来をすでに見ているかのようだった。

対面に座っている男は、疑わしげな表情を浮かべた。

「田中さん、あなたは一体なぜ、母親が苦労して築き上げた会社を自分の手で破壊しようとしているんですか?」

彼女の目には軽蔑の光が一瞬だけ浮かんだ。

「あんなの、母親と呼ぶ価値もないわ」

その言葉が、扉の外で聞いていた母の心を鋭く突き刺した。

怒りと失望が胸の中で交錯し、母はもう自分の感情を抑えられなくなり、勢いよく扉を開けて入ってきた。

「小鳥!どういう意味なの?本当に家族の企業を破滅に追いやるつもりなの?」

母は震える声で問いかけた。

しかし、目の前にいるかつての優しい少女は、今や冷笑を浮かべる陰険な娘へと変わり果てていた。

「まぁ、私のお母さん―」

わざと音き延ばして、皮肉たっぷりに言った。

「証拠はあるの?私が会社の機密を売ったという証拠を出してみてよ。ただの口先じゃ意味ないわ。」

養女のこの冷酷な態度を目の当たりにし、母はわずかに残っていた希望さえも失った。

「田中小鳥!私が今まであなたに注いできた愛情は、全部あなたにとって束縛や悪意でしかなかったの?」

「ハハハ」

小鳥は声を上げて笑った。

「愛情だって?冗談じゃないわ。もしあなたがあの時、田中明日香にあんなに残酷じゃなかったら、私はもう腎臓を移植して普通の生活に戻れてたのに」

その一言一言が、まるで空気を引き裂くかのように鋭く響いた。

「このクソババアが」

――尊厳を土にまみれさせるその言葉は、さらに母を打ちのめした。

部屋の空気は一気に凍りつき、周囲の人々はひそひそと話しながらも誰も近づこうとしなかった。

家に帰った後の空気は、まるで嵐の前の静けさのように重く、圧倒的だった。

母は怒りに任せて、見えるものすべてを叩き壊した。その一撃一撃が、まるで心の中をも打ち砕くかのようで、魂まで震える音だった。

「田中小鳥!あなたには良心がないの?私は今まで、あなたに対して少しも悪いことをしたのというのか」

母は目を真っ赤にして叫び、その声には信じられないほどの怒りと裏切られた悲しみがこもっていた。

「どうして、どうして私を裏切って、会社を売り渡すようなことをするの!」

小鳥は冷たく母を見下ろし、軽蔑の笑みを浮か
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