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第006話

母は遺体安置所を後にしながら、「処理が終わったら教えて」と一言だけ残して立ち去った。

その間、悲しみや動揺の表情は一切見せなかった。まるで長年悩まされていた問題にようやく答えを得たかのような、冷淡で解放されたような態度だった。

小鳥はその場に立ち尽くし、涙を流しながらも、その感情をどこにぶつけるべきかわからないまま、混乱と複雑な思いが心の中で交らわせていた。

私の魂は、風に吹かれて揺れ、空気の中に溶け込んでいく。最後まで、待ち望んでいた母の愛を得ることはできなかった……

私が死んでいなければ、小鳥はきっと本性を見せなかっただろう。

家に帰った後、母はまるで何事もなかったかのようにしていた。

「小鳥、今夜は何が食べたい?母さんが作ってあげるわ」

その声には、少しの温かささえ感じられた。

もしこの光景が幼い頃の私に向けられていたら、きっと幸せを感じていたはずだ。

だが、今となっては、その温かさが滑稽にさえ思える。

小鳥はその場に数秒間立ち尽くし、ようやく我に返った。

「母さん……わ、私はお腹が空いてないの」と言って、慌てて階段を上った。

彼女の背中は、灯りに照らされてどこか寂しげに見えた。

私はそのまま彼女についていき、部屋に入った。

小鳥はドアと窓をしっかり閉めると、すぐに携帯電話を手に取り、誰かに電話をかけ始めた。

「そうよ、田中明日香は死んだの。もうまともな腎臓提供者がいなくなった!」

受話器の向こうからは、焦った声が聞こえてきたが、小鳥は怒りと絶望を隠そうとしなかった。

「これが何を意味するか分かってる?これからも透析を続けなきゃいけないのよ!毎週3回!それがどんな感じかわかる?」

その言葉を聞いた瞬間、私の心はまるで針で刺されたように痛んだ。

結局、彼らにとって私はただの道具でしかなかったのだ。

「そう、そう、そう!」小鳥はますます興奮し始めた。

「彼らの家の財産がなかったら、私がこんなに従順でおとなしくしてると思う?ふざけないで!」

彼女は冷たい笑みを浮かべながら、「この世界で信じられるのは自分だけよ」と言った。

その瞬間、私は部屋の片隅に佇んでいる自分の魂が、まるで涙になりそうな気がした。

突然、下の階から母の声が響いた。

「小鳥、ご飯ができたわよ。ちょっとでも食べに来なさい」

「いらない!」

小鳥は冷
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