第3話

私は目を上げて、軽く微笑んだ。

「そうか、それなら自業自得だね」

私と由佳里の立場は完全に逆転していた。

みんなの嘲笑の的は彼女に移り、私は見事なパフォーマンスのおかげで、いくつかの広告契約まで得ることができた。

しかし、それから間もなく、母が「会いたい」との名目で電話をかけてきて、家に戻るように言われた。

前世の出来事を思い出し、私は鼻で笑った。

会いたいだなんて嘘だ。どうせ地元の成金との見合いをさせようとしているだけだ。

「もう結婚相手を選べる歳じゃないんだから、さっさと結婚しなさい」

「近場で嫁ぐんだから、片腕や片足がないわけでもないし、むしろいい話よ！」

私がまだ二十代で、すでに経済的に自立していることや、容姿も頭も良く、普通の人よりも優れているという事実があったとしても。

それでも、あの人を塵のように扱う残酷な言葉は、鋭い棘となって私の心に深く刺さった。

今振り返れば、すべては高額な結納金を狙ったモラハラだったのだ。

私は電話番号を変え、母と妹の連絡先をすべてブロックした。毎月送っていた80万円生活費も全て止めた。

もう二度と、血を吸われるだけの餌食にならない。

ブロックされたことを知った母は、怒り狂いながら何とかして私に連絡を取ろうとした。

そして、とうとう彼女は私が撮影している現場にまでやってきた。

ちょうどその日は、落水して男主人公に助けられるシーンを撮影しているところだった。

冷たいプールから男優に抱き上げられた瞬間、いつの間にか母がやって来ていた。

私が薄いドレスを着て、全身ずぶ濡れの状態で男性の腕の中にいるのを見た途端、母は怒りに燃え上がった。

そして何も言わず、私の髪を引っ張って、思い切りビンタをくらわされた。

「なるほどね、あんたはこんな恥知らずなことをしてたんだ」

「電話にも出ないで、俳優になったからって、そんなに偉くなったつもりか！」

「どうせ体を使って這い上がろうとしてるだけだろ！さっさと結婚して主婦になって、菊池家の恥を晒すな！」

アシスタントの優は、蘭子が私の母親だと知っていたため、彼女を入れてしまった。

しかしまさか、母が騒ぎを起こしに来るとは思わなかった。

周りの人たちは皆、口を押さえて興味深そうに見守っていた。

次のビンタが私の頬に迫る瞬間、ある人が蘭子の腕を掴んで止めた。

見上げると、そこにいたのは主演の加島裕也だった。

彼は携帯を取り出し、画面にはまだかけていない通報の画面が映っていた。

「公共の場で暴力を振るうなんて、法律を守れよ」

母は鼻で笑った。

「私は彼女の母親よ！娘を少し躾けて何が悪いの？」

「そうか？」

裕也は目を細め、冷たくなった口調で言った。

「それなら撮影の進行を妨げたことについて、責任を取ってくれる？」

「この一時間の撮影セットの使用料は300万、ここにいるスタッフ全員の遅延料金は最低でも600万だ」

「警察を呼んで、細かく計算してみるか？」

母はようやく焦り出した。彼女にとって、金を取られることは命を取られるよりも辛い。

「星良、この件はまだ終わらないわ」と一瞥し、足早にその場を立ち去った。

裕也は上着を脱ぎ、私にかけようとした。

私は震える声で「ありがとうございます」と言った。

母がこれでしばらくはおとなしくなると思っていた。

しかし、その日の夜、彼女は「菊池星良の母」というIDを作り、Xに私を非難する内容の投稿を大々的に公開した。

みんなは驚いた。母親の投稿に書かれた私は、まるで冷血で悪意の塊のように描かれていた。家族をブロックし、ガンを患っている母親を無視しているのだと。

「苦労して育てた娘がスターになったって何の意味もない！親を簡単に忘れた恩知らずだ！」

彼女が投稿した内容はネット上で大きな波紋を呼び、私が親不孝者だという誹謗中傷はどんどん激化していった。

その勢いに乗って、彼女はネットでのライブ配信を始め、視聴者と一緒に私を非難し続けた。

私は自ら母にメッセージを送った。

「実の娘をネタにしてる気分はどう？」

彼女は勝ち誇ったように言った。

「男を誘惑する下品な女優になりたいでしょ？」

「そうさせないわ」

私が女優になることが好きだって？

目を閉じると、心の中に酸っぱくて痛む感情が湧き上がってきた。