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第82話

幸福な時間は、いつもあっという間に過ぎ去ってしまった。

昼食を終えると、田中一郎は長く留まることなく、彼女にゆっくり休むように言い残してから、トレーを持って部屋を出て行った。

アパートの外では、兼家克之と常盤太郎が遠くから田中一郎がきれいなトレーを持って降りてきたのを見かけた。

兼家克之は常盤太郎の耳元で小声で言った。「田中様、今回の食事時間は少し長かったですね」

常盤太郎は「おそらく、夫人が食べるのが遅かったのでしょう」と言った。

兼家克之は「田中様は機嫌が良さそうだね」と言った。

常盤太郎は予測した。「すぐに悪くなるかもしれない」

田中一郎が近づいてきた。

「田中様」二人は声を揃えて挨拶をした。

田中一郎が二人のそばを通り過ぎるとき、目つきが一瞬で厳しくなり、トレーを彼らに差し出しながら淡々と言った。「これを洗っておけ」

「はい」

常盤太郎はトレーを持ち、兼家克之と肩を並べ、田中一郎の後ろについていった。

田中一郎は厳しい態度で冷たい声で尋ねた。「犯人は見つかったのか?」

兼家克之は「十二人を特定しましたが、まだ調査中です」と答えた。

「実験室の状況はどうだ?」田中一郎は歩きながらさらに問いかけた。

兼家克之は「何度も失敗して、教授たちは疲れ果てています。新しく来た谷口教授も何の解決策もありません」と答えた。

田中一郎の顔色は暗く、眉間にさらに深い皺が寄り、足取りも速くなった。「光速弾のプログラムは正常か?」

「プログラムは神秘的なハッカーに絶えず侵入され、何度も破壊されており、進捗は非常に遅いです」

「演習の予定はいつだ?」

兼家克之は困って数秒沈黙した。「えっと……」

田中一郎は心中で煩わしさを感じていた。次々と厄介な問題が彼の解決を待っており、どれも困難を極めるものばかりだった。

「言え」彼は少し苛立って言った。

兼家克之は消沈した声で、「上級からの通知で、演習場所に事前に埋められた爆発物が見つかったため、一時的に中止するとのことです」と報告した。

田中一郎は歩みを止め、たくましい体がまっすぐ立ち止まり、その背中には計り知れない重みが感じられた。

兼家克之と常盤太郎は、田中様の肩にかかる重責を思うと苦しくてたまらなかったが、何もできず、ただ心を痛めるばかりだった。

常盤太郎は恐る恐る報告した。「田中様、もう
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