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第62話

 桃は何気なく口を開いた。「私にいいことを言わせたいなら、いいですけど、私は現実的な人間ですから、得がないことはしないです。」

明は桃の言外の意味を聞き逃さなかった。またお金を要求しているのだ。

この間、桃は日向家からかなりの金額を引き出し、家をめちゃくちゃにしていた。

「桃ちゃん、家族なんだから、いつもお金の話ばかりするのはどうかと思うよ……」

桃は彼の言葉を途中で遮った。「今日は体調も悪いし、気分も良くないです。日向さんが嫌ならそれでいいです。気が向いたらまた話しましょう。」

桃はそう言い残すと、そのまま去ってしまった。

明は急いで彼女に50万円を送るように指示した。

桃は外で昼食をとりながら、口座に入金されたお金を確認したが、表情は変わらず冷たいままだった。

昔、明が浮気をして、本来ならば母親は財産の半分を受け取る権利があった。しかし、この裏切り者はそれを許さず、愛人とその娘を家に迎え入れ、母と共に彼女たちからひどい扱いを受けた。

結局、母はその屈辱に耐えられず、不公平な離婚協定にサインし、何も持たずに家を出た。

その時、桃と母は家も車もほとんどお金も持っておらず、路頭に迷うところだった。その後、母は娘の大学のために一生懸命働き、ついには体を壊してしまい、今も病床についている。

そんな過去を思い出すと、桃の目には憎しみが浮かんだ。

明が渡した数百万円は、当時の日向家の財産の十分の一にも満たない。

明はどうして彼女に同情を売る資格があると思っているのか。そう考えながら、桃は明にこんなメッセージを送った。

「お金は受け取りました。でも、これだけでは私の気分を良くするには足りないです。もっと頑張って、私が喜ぶかどうか試してくださいい。そうしたら、あなたの頼んだことをしてあげるかもしれないです。」

明はすでに家に戻っており、桃からの良い知らせを待っていたが、こんなメッセージを見て、怒りがこみ上げてきて、携帯を地面に叩きつけた。「このくそったれの娘が!」

家で美容をしていた歩美は外の物音に気づいて現れ、「あら、明、どうしたの?そんなに怒ること?」

明は怒りをぶつける相手がいない中で、歩美が日々美容とショッピングばかりしていることに腹を立て、彼女を睨みつけた。「それも全部、あの桃のせいだ。今や彼女は大きな木に登って、我が日向家を見下している
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