第183話

彼が去った後、マイクはすぐに社長室に戻ってきた。

「元夫が君に何をしに来たの？あんなに険しい顔して、何かされたんじゃないか？」マイクはとわこの前に歩み寄り、彼女を椅子に座らせ、水の入ったコップを手渡した。

もともと怒っていたが、マイクの気配りを見て、とわこは少々気恥ずかしそうに言った。「彼があなたを私の彼氏と誤解していてね。否定しなかったけど、大丈夫？」

マイクの淡く青い瞳が瞬いた。「彼氏なんてどうでもいいよ。もし君が僕を旦那にしたいなら、今すぐにでも結婚できるよ」

とわこは笑って返した。「私はもう結婚するつもりないわ。その配偶者は将来の本当の愛のためにとっておいて」

マイクは憂うつそうな顔をした。「僕も結婚するつもりはないよ。前の恋人にひどく傷つけられたんだ。この世に本当の愛なんて存在しないさ」

数年前、マイクの脳には非常に危険な腫瘍が見つかった。

最終的にはとわこが彼の手術を行い、成功した。

しかし手術前の期間に、五年間付き合っていた彼の恋人が彼を捨てた。

手術の後、マイクはとわこと共にANテクノロジーを設立した。

「もう嫌なことは考えないで。住む場所は見つかった？まだなら、私がホテルを予約してあげるよ」とわこはスマホを取り出し、ホテルの情報を調べ始めた。

「僕は君の家に住むよ！もう荷物も君の家に持って行ったし、君のお母さんがすごく親切に迎えてくれたんだ」マイクは得意げに言った。「僕たちこんなに仲がいいんだから、君の家は僕の家だよ。ホテルなんて要らないさ！」

とわこは無言で答えようがなかった。

だけど、マイクは男性が好きだから特に気にはならなかった。

……

蓮は今日、学校を休んでいた。

彼はレラを連れて常盤弥の会社に行った。

今の二人の目的は、お父さんが誰なのかを明らかにすることだった。

常盤奏には近づくのが難しいため、まずは常盤弥から探ることにした。

昼休みが終わって、常盤弥は会社を出て近くのレストランで食事をしようとしていた。

そのとき、レラが小さなバッグを背負ってオフィスビルの入口に現れた。

常盤弥は一目で彼女を認識した。

このおかっぱ頭の小さな女の子は、彼にとってとても印象深かったのだ。

ここ数日、彼は夜になると悪夢を見ることが多く、その夢の中では自身のスマホにトロイの木馬ウイルスを仕掛けたのがこの可愛らしい