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第14話

 彼女の瞳に映ってる彼の顔は悪魔のようで、鋭利な牙を剝きだした。

「どうして、奏、子供が欲しくなくても、こんなひどい言葉はないだろう?」とわこは辛そうに聞き返した。

「はっきりさせないと、君が望みを捨てないから」奏の目が奥から冷たく光らせた。

とわこは息をのんで、目線を彼の顔からそむけた。

あまりの怖さに驚かれて、彼女は深い暗闇に吞まされるようになった。

奏は彼女の反応に興味が湧いてきた。

「もしかして、僕の子供が欲しかったのか?」嘲笑いながら、奏が聞いてきた。

とわこは目を丸くして、彼を睨んだ。

「忠告を忘れないでね。僕がどんな人間なのか君は分かるはずだ。言葉よりさらにひどい行動をとる人だ。死にたなければ、僕の逆鳞に触れるな」怒鳴るように言い聞かせて、奏は窓の外に目を向けた。

「安心してよ。あなたの子供なんか産むわけないわ。あなたのことが大嫌いだ。お分かりのはずだ。今、早く離婚したいのだ」あまりの怒りに、とわこはこぶしを握り締めた。

子供は彼一人のものじゃない。

産んだとしても、自分一人のために産むわけだ。

子供が大きくなったら、お父さんが死んだと伝える。

「今はタイミングじゃない。お母さんがもうちょっと元気になってからにしよう」彼女の話を聞いて、奏は多少落ち着いた。

彼女に好かれていないことにやっと気づいた。

「長引くのは嫌だ」眉をひそめて、苛々した彼女が言った。

長引くと、お腹が大きくなってくるのだ。

そうなると、必ず病院に引っ張られて、中絶せざるを得なくなるだろう。

「そんなに焦ってて、僕に何を隠してるのか?」奏は言いながら彼女を見透かすように見つめた。

とわこの心臓が一瞬止まった。「ないよ。焦ることなど何もないわ。ただし…あなたと一緒にいたくないだけだ。もしかして誰かに言われたことがないの?あなたといると気が落ち込むのだ」

「そう思っても、あえて口に出せないだろう」苦笑交じりに奏が言った。

「そうだけど。だから私を目障りに思ったのか。でも、私は何かがあったらすぐ口に出すタイプだ。話せないと気が済まないのだ」口を歪めてとわこは言った。

「自分の妻がおしゃれして他の男に付き合うなんて、誰でも許さないだろう」誤解されたと思って彼女に言い聞かせた。

「吊りスカートを着るのは尻軽女?飲み会は他の男との付合いだと?それなら、あなたたち男の飲み会はどうなの?あなたに殺されても、夕べ話したことは間違ってないと思うわ」とわこの言葉は激しくなった。

二人はまるで全然違う星から来た人間のようだ。

同じ人類のほか、似たようなものは何一つない。

「というと、またするのか?」唇を震えながら、笑ったような奏は怖かった。

「元々お酒を飲めないから、人に付き合って飲むなんて、いくら無理強いされても飲めないのは飲めないのだ」彼女は怖がって少し部屋の角へ引いた。

孕んだ双子の命にかかってるから、無茶することはない。

お父さんの会社が倒産したにしても、お金のためにお酒の付き合いなどは絶対しない。

彼女の言葉を聞いて常盤の怒りが収まった。

車が常盤邸に着いた。

車が止まるのを待ちきれないほど、とわこはドアを開けて逃げるように離れた。

離れた彼女の後姿を眺めながら運転手に指示した。「会社へ」

……

車の音が消えて、とわこはほっとした。

昼寝をして、午後2時半ごろ、三千院グループに着いた。

お父さんの屋敷、車およびほかの不動産を全部売却して借金を返すつもりだ。

お金になるものをすべて売却して、返済できるものを返済してから、投資ファンドをゆっくり探すと思った。

銀行はもう当てにならない。

夕べ、江城銀行と陽光銀行の二人の頭取を怒らせたので、今後一切お金を貸さないとはっきり断られた。

「とわこさん、自分を責めないで。さらにひどいことをされるかと思った。そんな軽い女でないことは十分承知したので、そうはさせなかったのだ」副社長の田中が心配そうに言い出した。

「強迫されても、そんなことはしませんから」とわこは頷いた。

田中は顔が熱くなった。頷きながら言い出した。「夕べ東京の金持ち達の名簿リストをまとめた。わが社を助けられる実力のある人達だ。その中の一人を説得できれば、わが社が生き返られると思う」

とわこは紙を手に取って一目を通した。

名簿リストには名前、性別、会社名、今の身分、および電話番号の内容が分類されて並べられている。

そのうち、電話番号が載っていないのもあった。

「電話番号のない人たちにどうやっと連絡しますか?」とわこは尋ねた。

「電話番号入手できなかった。飛び込み訪問しかないと思うなんだ」田中が回答した。

とわこはもう一回名簿リストに目と通した。

今度、一人の名前が浮き彫りに出た。

それは2番目の常盤奏だ。

常盤奏、男性、常盤グループ、個人資産は2兆円以上。

電話番号はなし。

驚かされて顔が熱くなってきたとわこは呟いた。「常盤奏はそんなに金持ちですか?」

ひと口水を飲んで、心の揺れを抑えた。

「これは保守的な数字だ。これよりはるかに高いと思う。彼はインタネットが始まった当初に常盤グループを築き上げたのだ。今はインタネットビジネスが繁盛するように彼の資産も膨らんでもっと高くなったはずだ」田中が確信していた。

「そうか…」

「残念だが、電話番号を入手できなかった。直接行くしかなかった。もし行くなら、私も同行する」

「行きません!行きませんよ!」とわこは何回か頭を横に振って言った。

直ちにペンをとり、彼の名前の所に横線を引いた。

お金を貸してくるはずがない。彼を頼むなんて、恥をかくだけじゃ。

夕方、帰宅中に薬屋に寄った。

薬屋で血行を良くする薬を買うつもりだった。

いくつか勧められたが、ふと思いついて店員に聞いた。「妊娠中に大丈夫かしら?」

「それは多少影響はあると思います。妊娠しているのでしょうか?」と店員に聞かされた。

とわこは頷いた。

先に紹介した薬を片付いて、店員さんは別の瓶を持ってきた。「妊娠何か月ですか?お腹はまだ出てないですね。でも、今から栄養を取らないといけないですよ。このサプリメントは妊婦にとても人気です。病院のお医者んにもお進められていますが」

30分後にサプリメントを持参して家に着いた。

夕飯の時間も過ぎた。三浦婆やが彼女のために用意してあったのだ。

「若奥様、どんな薬でしょうか?」薬屋の袋を見て三浦婆やが聞いた。

後ろに隠しながら、「血行を良くする薬だ」と言い聞かせた。

「家にはそんな薬がありますよ。常備薬はほとんどあります。また何か必要があれば直接おっしゃってください。私が取ってきてあげます」微笑みながら三浦婆やが言った。

「それじゃ、また」彼女は自分の部屋へ戻ろうとした。

その時、不意に常盤と出くわした。

先ほど、二人が話しているときに彼がやってきたのだ。

とわこがビニール袋を後ろに隠すとき、ちょうど彼に見られた。

「どうして噓をつくの?」サプリメントにとどめた目から冷たい光を光らせた。

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