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第22話

怒った奏を見て直美は火に油を注いだ。

「奏、とわこはあなたに嫁ぐ前、弥と付き合ったの。これはいいけど、誰にでも過去があるもの。でも、結婚してから弥と不倫するなんて、これは常盤家の恥だ。多分、奏はあのまま目覚めないと思っていたからだわ」

かっとなった奏はこぶしを握り締めた。

怒りを抑えきれず、必死に母子手帳を睨んでいた。

「きっと奏の金目当てだわ。当時、医者が余命宣告をした時、奏はもう長くないと思っていた。そんな時、とわこが嫁いできて、しかも子供もできた。そうしたら、奏の資産はすべてあの女のものになるのよ。

計画通りだった。でもあいにく、奏が目覚めたの。これで彼らの計画は水の泡になったのよ」

「出て行け!」奏は怒鳴り出した。

本当かどう別として、悪事が暴れて、奏は気色悪いと感じた。

直美は怒鳴られて悔しいが、奏の気持ちを十分理解していた。

椅子から立ち上がり、慎重にドアを閉めて離れた。

少し落ち着いてから、奏は襟を正した。そしてもう一度母子手帳を手に持ち、さっさと一通り目を通した。

最後、視線は常盤弥という文字の所に止まった。心の底から殺意が湧いてきた。

兄が自分の資産を狙っているのは奏は知っているが、まさか身近にいるとわこが彼らの駒だったとは知らなかった。

この罠にはめられるところだった。

夕べ、とわこと乱れた一晩過ごしたことを思うと、彼の怒りは抑えきれていた。

……

常盤家。

主寝室。

とわこは大きなベッドでよく寝ていた。

ドアを力強く開けられ、大きな音がした。

目覚めてない彼女は乱暴に引っ張られ、起こされた。

「失礼しました」用心棒は彼女をベッドから引き揚げて、肩で担いだ。

「何?!どこへ連れて行くの?!」彼女はびっくりして叫び出した。

「病院、中絶」用心棒からの言葉は簡単だった。それを聞いてとわこは冷たい湖に沈むように落ち込んだ。

奏に妊娠のことを知られたのか?

どうしてわかったのか?

誰が告げ口をしたの?

「奏はどこ?会わせて!」怖くて泣きだしたとわこが叫び続けた。「子供を降ろせない。絶対に嫌!」

用心棒から脱走しようと思ったが、昨日の夜に力尽くした。

彼女が破棄物のように車の後部座席に落とされた。

広い車内に奏は座っていた。冷え込んだ目で彼女を睨んだ。

彼は一枚の紙を彼女の顔に投げ捨ててきた。

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