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第29話

手でとわこの肩を撫でながら井上が言った。「お父さんだから、とわこを害することはしないよ。昔お父さんと一緒になった頃、会社はまだ始まったばかりだった。結婚の時に結納金どころか、かえって金を援助したの。とわこを害するようなことをしたら、鬼になっても絶対許せないからね」

……

月曜日。

とわこはタクシーで常盤グループに向かった。

常盤グループに来るのは初めてだった。

会社ビルは聳え立って、とても立派だった。

タクシーから降りて、彼女は直接ロビーに向かった。

「お嬢さん、アポを取ってますか?」受付から聞かれた。

「ないですが、三千院とわこと申します。三木直美に連絡していただけないでしょうか。私の名を聞けば、彼女は必ず応えますから」

身なりの整えたとわこを見て、受付が広報部へ電話した。

しばらくして、直美が降りてきた。

エレベータを出た三木直美は傲慢そうに歩いてきて、とわこを見下ろしていた。

「中絶手術を受けたばかりじゃないか?安静しなくても大丈夫なの?」とわこを揶揄った。

軽い化粧をしたとわこの顔色が悪くなかった。「直美、工夫をしてここまで来れたのに、奏と結婚できそうなの?」

直美は怒らなかった。逆に勝利を勝ち取ったのような笑った。「私と結婚しなくても、もう君の傍にはいられないでしょ。とわこ、子供を降ろすだけで済んだんだ、彼に感謝したらどうだ?私なら、君を殺したかもしれない」

「そうか、どうやらあなたは違法なことをいっぱいしたのね」

「私を怒らせるつもりなの?滑稽だよ、とわこ」唇をまげて、直美は冷たそうに言いだした。「君はもう負けだよ」

それを聞いて平気だったとわこは話題を変えた。「直美、奏の前でプリンセスドレス履いたことがあるの?」

話を聞いて直美は眉をうわ寄せた。「子供なのか?私はプリンセスドレスなんて着るはずがないよ。急になに?」

「あなたが奏に嫌われる原因やっとわかった」口元をうわ寄せ、彼女の耳に近づいてとわこは言った。「奏はかわいい女性の方が好きなの。それにプリンセスドレスを着る女性を見るのも好きだよ」

冗談を聞いたみたいに直美はあざ笑った。

「私は奏と寝たよ。直美はまだだよね。彼は女性がプリンセスドレスを着る姿が好きなの。それに姫カットの髪型も好みよ。そうだ、ドレスの色はピンクが一番だよ。もしそんな格好をしたら、奏はあな
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