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第28話

「…パスワードなど知りませんが。父は往生際に教えてくれませんでした」頭を横に振りながらとわこは言った。

それは嘘じゃない。

お父さんは最期の時、確かに会社のことを口にしなかった。パスワードの遺言などなおさらだ。

当時、部屋にはたくさんの人がいた。言ったとしたら、彼女のほかに、みんなが分かってしまうだろう。

「おじさん、この件、持ち帰って母に聞いてみます」とわこは田中に言った。「父と最後に会った時、あまり話してくれませんでした。母は多分私より知っている事が多いと思います」

「はい分った。この件まず口外しないで、わが社のトップクラスの秘密だ。社長がじきじき任命した後継者だから教えたの」田中は親し気にとわこに言い聞かせた。

金庫を眺めながらとわこはだんだんわかってきた。

彼らは金庫を開けられないから、仕方なく彼女にこの秘密を明かしたのだ。

もし金庫を開けたら、きっとそのまま金庫のものを私物にして、この件をなかったことにするだろう。

「分かりました。絶対に口外しません。おじさん、ほかに誰が知っていますか?」聞きながら、とわこはドアへ向かった。

田中は後ろについていた。

「ほかには2名の技術者が知っている。彼らは社長に信頼された人たちだ。会社にも長かったのだ。お金をもらったら、私たち均等に分けよう。どうだい?」田中は説明していた。

とわこは頷いた。「まずパスワードを探してみます」

「よっしゃー!。実はとわこさん、私も続けたいが、会社と私たちのチームを買ってくれる人がいないのだ。みんながこのシステムだけほしいの。いつか私たちが必ず排除されるだろう。いろいろ考えた挙句、こう決めたのだ」

「分かりました。おじさん、もしパスワードを見つけなかったらどうしますか?」田中を見つめながらとわこは言った。

彼女は本気で心配していた。

パスワードについて全く見当つかなかったのだ。

田中は眉をひそめた。「君に会社を預けた社長は必ず何かのヒントを残している。戻ってゆっくり考えて探してね」

「うん」

会社を出て、とわこはタクシーを拾ってお母さんの所に行った。

井上は料理の準備をしていた。

「とわこ、弥は何用だったの?すでに分かれたじゃないか?」

水を飲んでからとわこは回答した。「奏に殴られました。復讐しようと思って、私に奏を殺せって頼んできました」

井上
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