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第24話

常盤は眉をひそめた。

申し込み書を見なかったら、弥のことを信じるかもしれない。

「とわこはお前の子供と言ったのだ。それは確かのものだ」用心棒が怒鳴り出した。「こんなことをやって、いくらお前でも生きてもらえないの」

弥は泣き出した。「あれは嘘です。彼女と別れたのは触ってもらえないからです。僕に振られて悔しかったのでしょう。ですから、わざと言ったに違いありません。これは私への仕返しです。おじさん、僕を信じてください。彼女のお腹にある子どもが誰のものかわかりませんが、私だけは絶対あり得ないです」

地面に這い、怯えているこの男を見て、奏はどうしようもなくなった。

これはとわこが惚れた男かよ。

この男なら、何かあった場合、必ず彼女を売りに出すのだ。

「引っ張りだしていけ!命に気づけろう!」奏の情けない声がしばらく響いた。

弥を簡単に死なせるわけがない。

とわこの前で、ゆっくり、ゆっくり弥のプライドを潰していくのだ。

……

井上はとわこを連れてリースした部屋に戻った。

部屋に入って、直ちにとわこをベッドに横になってもらった。

「とわこ、泣かないで。今は泣いちゃいけないの…流産してから、体がもたないわ…」

天井を見上げながらとわこは言い出した。「お母さん、子供たちはまだいるの。おろしてなかった」

話を聞いた井上は一瞬呆れた。「とわこ、どういうことだ?無理やりおろされたと言ったじゃないか?」

「お医者さんに交渉したの。もし子供がおろされたら、私もいっしょに死ぬと。それに、彼女をも殺してやると」

とわこの声は静かで落ち着きがある。

子供たちがまだいるが、彼女の心は死んだようだ。

今は幸いに逃れたが、また今度は?

奏のそばに居れば、子供たちが永遠にこの危機から逃れない。

携帯が鳴った。悲しい空気が突き飛ばされた。

田中からの電話だ。

「とわこ、夕べ私飲みすぎた。目覚めたばかりだ。今日Zさんから連絡来たのかい?」

とわこは呆然とした。「いいえ。夕べ、誰と飲んでいましたか?」

「Zさんだよ。渡辺裕之というの。若い男だったが、ネットで調べたら、何も出てこなかった。金持ちのようだ。ずっといいプロジェクトを探してたって…沢山お話ししたが、どう考えていたか全く見当つかなかった」

「常盤奏と知り合いでしたか?」とわこが慎重そうに聞いた。

「これは
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