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第11話

 「そういえば、真一、昨晩は強盗にナイフで刺されてたよね。

 傷は……大丈夫?

 病院に行ったほうがいいんじゃない?」

 和子は心配そうに尋ねた。

 昨夜、彼女ははっきりと見ていた。真一が強盗にナイフで胸を刺されたことを。

 だが、不思議なことに、真一は今元気いっぱいで、まるで何事もなかったかのようだ。

 これにより、彼女は自分が見間違えたのではないかと疑い始めていた。

 「大丈夫だ。

 この傷は大したことない」

 真一は無意識に胸を触ったが、傷口に触れてしまい、痛みで眉をひそめ、思わずうめき声を上げた。

 「どうしたの?

 痛いの?

 さあ、今すぐ病院に行こうよ!」

 和子は立ち上がり、緊張した顔つきで言った。

 「いや、そんなに痛くない。

 ちょっと痛みを感じただけで。

 病院には行かなくても大丈夫だ」

 真一は再び傷口を触ったりしたが、痛みは徐々に和らいだ。

 彼は傷の状態を確認するために服を脱ぎたかったが、和子の前では少し恥ずかしかった。

 「服を脱いで、怪我の様子を見せてくれる?」

 和子は依然として心配していた。

 「えっと……」

 真一は少し戸惑った。女の子の前で服を脱ぐのは、多少恥ずかしかった。

 「早く!」

 和子は焦って促した。彼女はすでに真一が男であり、しかも血気盛んな男であることを完全に忘れていた。

 女の子の和子が気にしていないんだから、彼が恥ずかしがることなんてない!

 真一は決心して、上着を脱ぎ、痩せて引き締まった体を露わにした。

 和子が近寄って見ると、真一の胸の傷口はすでにかさぶたができており、四、五センチほどの醜い傷跡が残っていた。それはまるでムカデのように伸びていて、見た目は非常に恐ろしかった。

 「こんなにひどい傷になってるのに、大丈夫だなんて言えるわけがない!」

 和子は本能的に真一の胸の傷跡に触れた。鼻がつんと痛み、涙が目に浮かんだ。

 この傷は、昨夜真一が彼女を守るために負ったものだ。彼女の心は言い表せない思いでいっぱいだった。

 しかし、その次の瞬間、不思議なことが起こった。

 和子の指が触れると、傷跡が少しずつ剥がれ落ちていき、その下からはまるで赤ちゃんのように新しい、ピンク色の肌が現れたのだ。

 和子は驚いて目を見張った。通常、傷跡が完全に治るまでには一、二ヶ月はかかるはずだ。

 しかし、昨夜から今まで、まだ一日も経っていないのに、真一の胸の傷跡はすでに剥がれ始めていた。そして、新しい肌には何の痕も残っていなかった。

 これって、どう考えても信じられない!

 和子は困惑し、さらに軽く傷跡を軽くこすってみた。すると、すべての傷跡が徐々に剥がれ、新しい肌には本当に一切の痕が残っていなかった。まるで真一が傷ついたことがなかったかのようだった。

 和子は唖然とした。

 真一は顔を赤くした!

 和子の柔らかく滑らかな手が彼の胸を撫でる様子は、まるで恋人同士の愛撫のようだった。

 真一は、若く元気な男性として、この状況に耐えられるはずもなかった。

 彼の体はすぐに緊張し、心臓はドキドキと激しく鼓動し始め、緊張のあまり息が詰まりそうだった。

 「真っ昼間から、お前たち二人は何をやってるんだ!」

 ちょうどその時、怒鳴り声が響いた。

 一人の五十歳近い、厳しい顔つきをした中年男性がリビングに入ってきた。

 彼のそばには、親しげに寄り添う三十六、七歳の華やかな女性がいた。彼女は魅惑的な顔立ちで、派手な濃い化粧をしていた。

 真紅のタイトなドレスを着ており、深く開いた胸元からは魅力的な体が覗いていた。その姿は、動くたびに見る者の心を掴んで離さなかった。

 「お父さん……どうしてここに?」

 和子は驚いて、真一が上半身裸であり、自分の手がまだ彼の胸に触れていることに気づいた。

 二人の姿勢はとてもみっともなかった。

 サッ!

 まるで感電したかのように、和子は顔を赤らめて手を引っ込めた。

 真一も手探りで服を見つけ、急いで服を着た。

 ふたりとも顔が赤くなって、まるで何かいけないことをして見つかったみたいだった。

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