第19話

　「これは一体どういうことだ？」

　林さんは茫然としていた。ついさっき意識を取り戻したばかりで、何が起こったのかよく分からなかった。

　「実は……」

　和子が近づき、事の経緯を詳しく説明した。

　林さんは驚き、健一に平手打ちをくらわせ、怒鳴った。「バカ者！お前は何をやっているんだ！

　真一は善意で助けようとしたんだ。治せるかどうかは別として、全力を尽くしてくれたのに、どうして恩を仇で返すんだ！

　さっさと真一に謝れ！」

　健一は別荘の件で真一に対してあまり好感を抱いていなかったが、父親の威圧に負けて、渋々と真一のところに歩み寄った。「真一、さっきのことは俺が悪かった、謝る……」

　「気にしないでください。ちょっとした誤解ですから、問題ありません」と真一は急いで言った。

　その時、斉藤さんもやってきて、深々と真一に頭を下げた。「先ほどの無礼をお詫びします！

　あなたの技術は素晴らしいです。まさに医学の奇跡です。心から尊敬しています！

　それと、ひとつお尋ねしたいのですが、先ほど使った鍼法は、もしかして失伝した天命六鍼ですか？」

　天命六鍼の話になると、斉藤さんの顔には興奮の色が浮かんだ。

　ただ助手は信じられない表情で、まるで真一が運よく成功しただけのように見えた。

　「天命六鍼って、聞いたことないですね」

　斉藤さんの質問を聞いた真一は一瞬戸惑った。さっきはただ頭の中に浮かんだツボの図に従って鍼を打っただけで、その技法の名前は知らなかった。

　「それなら、その医術と鍼法はどこで学んだのですか？」

　斉藤さんは疑いの表情を浮かべた。

　「それは……祖伝のものです……」

　真一はたどたどしく答えた。

　彼の技術は秦家の先祖から受け継がれたものであり、祖伝であると言っても過言ではなかった。

　真一が何か隠している様子を見て、斉藤さんはそれ以上問い詰めることはしなかった。また真一が鍼を打つ際に気で操ることがなかったため、この鍼法が天命六鍼であることを確認することはできなかった。

　しかし、彼は確信していることが一つあった。真一は林さんの難病を治せるほどの医学的知識を持っており、その技術は少なくとも彼に劣らない。

　「秦さん、これは私の名刺です。もし興味があれば、今後一緒に医術の交流を深めてみませんか？」

　斉藤さんは個人名刺を