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第21話

 「和子、今回のことを踏まえて、君が一人で外に住むのは危険だと分かっただろう?だから、家族の元に戻って来なさい!」

 健一は心配そうに言った。そして、隣にいる真一に一瞥を投げた。

 彼は娘の安全を考えて戻らせたいと思っていたが、同時に娘と真一を引き離したいとも思っていた。

 今までの情報からすると、真一は娘を追いかけるために命懸けで人を救ったが、運よく成功しただけだ。

 彼のような何の取り柄もない普通の男は、娘にはふさわしくないと思っていた。

 「無理です。絶対に戻りません!

 私が住んでいるのは高級住宅地で、プロの警備員が24時間体制で守っております。

 それに、今朝おじいさんが新たに6人のボディガードを手配してくれましたので、安全面に関しては問題ございません」

 和子は頭を振って断った。

 昨夜は家に帰る途中で犯人に誘拐されたが、それは単なる偶然だった。

 もし誰かが本気で彼女を狙うなら、家族の元に戻っても意味はない。

 「でも……」

 「でも何もないです。美咲が家にいる限り、私は絶対に戻りません!」

 和子はきっぱりと言った。

 健一は仕方なく、父親に助けを求めるような目を向けた。「お父さん、和子は普段あなたの言うことをよく聞きます。やっぱり彼女に戻るように説得してもらえませんか?」

 「いや、彼女が戻りたくないのなら、無理にさせる必要はない。

 これからはもっと人手を増やして、暗に彼女の安全を守ればいい。それで問題ないはずだ」

  林さんは淡々と言った。

 彼は和子と美咲の間の対立を知っていたし、二人が水と油のように合わないことも知っていた。

 実際、彼自身も美咲をあまり好いていなかった。

 しかし、美咲は運が良く、健一に息子を産んだ。それが林家の未来の唯一の後継者だったのだ!

 子がいるおかげで、母親としての地位を確立している。

 林さんが美咲をあまり気に入らなくても、孫娘を助けて美咲を家族から追い出すことはできなかった。

 「和子、せっかく帰ってきたのだから、真一を連れて家の中を案内して回ってくれ。あとで二人で私と一緒に夕食をしよう」

 林さんは笑いながら言った。

 「うん」

 和子は頷き、真一を連れてホールを出た。

 和子と真一が出て行った後、健一はついに心の中の不安を打ち明けた。「お父さん、実
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