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第29話

 少なくとも、彼の良心が許さなかった。

 「お前が誰であろうと、さっさと出て行け!さもないと容赦しないぞ!」

 隆司は怒りで爆発寸前で、怒りの眼差しで真一を睨みつけた。

 真一は迷っていた。

 彼には和子がいて、隆司の脅しを恐れてはいなかった。

 しかし、和子は二人の関係を隠したいと言っており、その関係を頼りにして会社で好き勝手するのも望んでいなかった。

 さらに、隆司は名目上彼の直属の上司であり、会社の実力者の一人で、多くの上層部の利益を代表していた。

 もし初日に上司と対立することになれば、真一にとって良いことは何もなかった。

 事態が大きくなって会社に悪影響を及ぼせば、和子の彼に対する印象も悪くなるだろう。

 真一が黙っていると、隆司は彼が怯えていると思い、笑いながら言った。「何をぼーっとしてるんだ、さっさと出て行け!」

 「主任、私は会社の規則に従って報告に来たのです。出て行けと言われても、それは少しおかしいのでは?」

 真一は決心を固め、反論した。

 彼はかつて馬場さんの命を救い、先日も和子を命懸けで助けた。その彼が、玲奈を見捨てるわけにはいかなかった!

 和子が怒るかもしれないが、そんなことは気にしていられなかった。

 「たかが新任の秘書のくせに、よくもそんな口をきけるな!」

 隆司は怒り狂い、真一の鼻先を指差して叫んだ。「坊主、お前はクビだ。今すぐ出て行け!」

 「ええ、私は新入りですが。何も悪いことをしていません。何の理由もなくどうしてクビにされるんですか?」

 真一は動じなかった。

 「俺が上司だからだ!」

 隆司は冷笑した。

 「僕の上司はあなただけじゃありません。もう一人の上司は社長です。

 今すぐ社長にに確認してきます。俺が本当にクビかどうか」

 真一は冷静に言い、振り返って歩き出した。

 彼は馬場家の企業で三年間働いており、職場の初心者ではない。隆司の脅しには屈しなかった。

 「お前……

 待て!」

 隆司は怒りで顔を赤らめ、一瞬息が詰まりそうになった。

 彼には真一を解雇する権限があるとはいえ、会社のオーナーではないので、真一がミスを犯したり会社の規則に違反したりしていない限り、簡単に解雇するのは適切ではなかった。

 もしこの件が和子の耳に入れば、彼にとって良いことはなかった。

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