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第36話

 「隆司、よくもそんなことを!」

 和子は怒りに燃え、隆司を鋭く睨んだ。

 隆司は事態がここまで悪化するとは夢にも思わず、顔が青ざめた!

 しかし、彼は多くの修羅場をくぐり抜けてきた人物であり、すぐに冷静さを取り戻した。

 「社長、さっきまで田中さんは僕の証人でしたが、今になって突然証言を覆しました。こんなきまぐれ者の言葉は信用できません!

 社長としてのあなたは常に公平であるべきです。一方的な証言だけで僕を罪に問うのはおかしいです」

 隆司は反論した。

 「不満かしら?」

 和子は冷笑を浮かべた。

 「もちろん不満です!

 僕はこの会社に長く勤めており、何年も会社に尽くしてきました。ですが、真一はただの新入りの秘書で、僕に取るに足りません!

 それに、さっき彼自身もこの件を認めていました。どうして僕を信じずに彼を信じるのですか?」

 隆司は強く主張した。

 「なぜかって?今から教えてあげるわ

 真一は数日前に命がけで私を救ってくれたの。彼は私の命の恩人よ!

 彼は私を救うために命を賭けたのよ。あなたなら、私が彼を信じるべきか、あなたを信じるべきか、どちらを選ぶと思う?」

 和子は冷笑しながら、事情を明かした。

 「何ですか?

 彼があなたの命の恩人だというのですか?

 そんな……そんなことはありえません!」

 隆司は驚き、その場に呆然としてしまった。

 前日、彼女が出勤していなかったことを彼は知っていた。また、彼は和子が何者かに誘拐され、後に救出されたという噂を耳にしていた。

 そして今、彼はようやく理解した。和子を救ったのが、目の前の真一だったなんて!

 「なるほど、そういうことか……」

 隆司はショックからようやく我に返り、顔色を失って床にどさりと座り込んだ。

 彩香が前彼に警告した通り、事が和子にまで届いた場合、良い結果にはならないだろうと悟った。

 当時彼は彩香が真一をかばうためにわざと脅かしていると思っていた。

 しかし今、彼はついに理解した。真一の本当の後ろ盾は彩香ではなく、社長の和子だということを。

 それもそのはず、真一が和子の命の恩人であることを知れば、彩香が真一をかばい、和子が一貫して真一に肩入れするのも納得がいく。

 真一の和子に対する恩義を考えると、彼が真一を陥れようとしたことは自殺
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