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第43話

 この病室は一般病室で、中にはベッドが三つあり、芹奈の他にもう2人の患者がいた。

 「若造よ、食事は自由だけど、言葉は慎重に選ばないといけないよ!

 山田さんが入院してこんなに長い間、病院の多くの医者でも手に負えないんだよ!

 あなたはこんなに若くて、専門の医者でもないのに、どうして治せるって言えるんだ?」

 「そうだよ!医療知識をちょっと学んだからって、医者になれるわけじゃない。もし患者に何かあったら、どう責任を取るつもりだ?……」

 ……

 二人の患者は首を振り、誰も真一を信じていなかった。

 浩介はもともと真一の意図を疑っていたので、二人の患者の言葉を聞いて、さらに彼を信じられなくなった!

 「姉ちゃん、この二人のおじさんの言う通りだよ。母さんの命をないがしろにするわけにはいかない!」

 「でも……」

 玲奈はさっきまで真一を信じていたが、今や母親の命に関わることなので、迷い始めていた。

 「信じてくれないなら、仕方ない。

 ただし、一言忠告しておくけど、山田さんの病状はまだなんとかなる範囲だから、できるだけ早く治療したほうがいいです!

 もし合併症が広がり続ければ、全身麻痺を引き起こす可能性があり、その時には手遅れになるかもしれません!」

 真一はため息をつき、少しがっかりしながら立ち上がり、去ろうとした。

 しかし、命に関わる問題なので、去る前に忠告しておいた。

 「そんな脅しには乗らないよ。信じるわけがないだろう!」

 浩介は笑った。

 「いいえ、私は秦さんを信じています!」

 玲奈は少し迷った後、しっかりと頷いた。

 彼女は浩介とは違い、会社で真一に救われた経験があったので、彼に対する信頼感があった。

 真一の正直さを信じており、彼が口先だけの人間ではないと確信していた。

 「私も彼を信じます……」

 芹奈は苦しみながらも体を支え、力なく言った。

 実際には、芹奈も真一の医療技術を本当に信じていたわけではなかった。ただ、彼女は長い間入院しており、毎日高額な医療費が玲奈と浩介に重い負担をかけていることを知っていたのだ。

 彼女は娘と息子にこれ以上の負担をかけたくなかった。だから、真一に試してもらい、もし事故が起こって命を失っても構わなかった。少なくとも玲奈たちを早く解放してあげることができるからだ!

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