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第50話

 「僕はやってません……

 中村主任、聞いてください。患者に勧めた薬は絶対に有害無益なんです……」

 博明は慌てふためき、何とか弁解しようとしたが、真一の身分を考えれば彼が嘘をついているとは思えず、博明の弁解は全く意味を成さなかった。

 「言い訳は聞きたくない!

 博明、今すぐ解雇だ。荷物をまとめて出ていけ!」

 中村主任は机を叩いて怒鳴った。

 「そんな……

 中村主任、お願いです。もう一度チャンスをください……」

 博明は哀れな声をあげ、転がるように中村主任の足元に這いつくばって、懇願し続けた。

 「どけ!

 警備員、こいつを連れ出せ!」

 中村主任は博明を蹴り飛ばした。手を振ると、数人の警備員が凶悪な顔で博明を押さえつけ、まるで死んだ犬のように彼を引きずり出した。

 「いいぞ!」

 「よくやった!」

 「こんな医徳のない奴は当然の報いだ、すっきりした!」

 ……

 病室の残りの二人の患者は拍手して喜んだ。

 「秦さん、少しお待ちください。すぐに患者の退院手続きを手配してきます」

 中村主任は恭しく微笑みながら、真一のカードを持って急いで出て行った。

 彼の姿が消えると、玲奈と浩介はお互いを見つめ合い、そして二人は一緒に真一の前に歩み寄り、ぽたんと跪いた。

 「田中さん、何をしているんですか?」

 真一は驚いて言った。

 「秦さん、こんなに助けていただいて、本当に感謝しています。どうかこのお礼を受け取ってください……」

 玲奈と浩介は一緒に頭を下げて感謝の意を示した。

 「私たちは同僚であり、友人でもあります。お互いを助け合うのは当然のことです。そんなに丁重にする必要はありません……」

 真一は慌てて玲奈と浩介を立ち上がらせた。

 「あなたは本当にいい人だね!」

 「今の世の中、あなたのように心の温かい人は少ないよ!」

 ……

 他の二人の患者は真一に対して親指を立てて褒めた。

 「そんな事ないです……」

 真一は少し恥ずかしそうに笑った。

 彼は、人間は本来善良であり、世の中にはまだまだ多くの良い人がいることを知っていた。彼自身は何も特別な存在ではないと思っていた。

 「若者、お願いがあるんだ。あなたの医療技術がこんなに優れているのなら、僕たちも診てくれないか?」

 「そうだね、診察料も払う
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