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第58話

 一方。

 真一は脚を組んで地面に座り、気で鍼を使って一郎の体に霊気を送り込んでいた。見えない気が銀鍼を通じて一郎の体内に流れ込んでいた。

 しかし、一郎の病状が非常に深刻なため、真一の消耗は甚大だった。

 すぐに彼は大汗をかき、顔色が青白くなり、体はどんどん弱っていた。ついには倒れそうなほどにまでとなっていた。

 この様子を見た見物人たちは皆緊張していた。真一が何をしているのかは分からなかったが、彼がもう限界に近づいていることは明らかだった!

 「拓海さん、見てください。この若者にはもう無理です。彼にはおじいさんを治す力がありません!

 これ以上遅れると、おじいさんはきっと……

 早急におじいさんを病院に連れて行った方がいいです。僕の医療技術であれば、機器を使って病状を診断し、必ずおじいさんを救えます……」

 佐藤先生は諦めきれず再び立ち上がった。

 「それは……」

 拓海の顔色が青くなった。

 真一が力を尽くしているのを見ても、じいちゃんはまったく反応がない。彼の心の中に残っていた真一への信頼もほとんど消えかけていた。

 「すぐに祖父を病院に連れて行け!」

 拓海は手を振って二人のボディガードに命令を下した。

 「待って……

 もう……治った……」

 真一は最後の力を振り絞って言葉をつぶやいた。体をもう支えられなくなり、バタンと後ろに倒れた。

 「治った?」

 拓海と周りの人々は驚き、地面に横たわる一郎を見て顔を見合わせ、不安そうにしていた。

 「全然反応してないじゃないか、治ったって?

 明らかに茶番だよ……」

 佐藤先生は冷ややかに言った。

 彼が言葉を言い終える前に、一郎が突然咳き込み始め、目を開けて起き上がった。

 佐藤先生は大いに驚き、息を飲み込んだ。

 「じいちゃん、大丈夫ですか? よかった!」

 拓海は大喜びで、急いで一郎を助け起こした。

 「うん、大丈夫だよ。今は体がとても軽く感じる!」

 一郎の声は以前よりはっきりしていて、少し体を動かすと力も戻ってきた。

 「おじいちゃん、この方のおかげで助かりました……」

 拓海は真一の方向を指差しながら言ったが、一郎が手を上げて話を遮った。

 「説明は要らないよ。さっき意識ははっきりしていたから、何が起こったか全部わかっている」

 一郎は真一の
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