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第56話

 拓海は驚いた。「そんなはずない!

 祖父が血を吐くことを事前に見抜いたんだから、治療の方法がないなんてありえない!」

 「もし最初から周村さんの治療を任せていたら、病気を治す余地はあったんです。

 でも今は状況が大きく変わり、病状がさらに悪化してしまって、もうあまり自信がありません」

 真一はため息をついて言った。見殺しにしたくない気持ちはあるものの、自身の腕に確信が持てなかったのだ。

 拓海は愕然とし、悔しさのあまり自分を責める気持ちでいっぱいになった。

 彼は、治療のタイミングが極めて重要で、一度逃してしまえば取り返しがつかないことを知っていた。

 最初に真一の医療技術を信じなかったこと、佐藤先生に適当な治療をさせたことが、じいちゃんの病状を悪化させ、最良の治療の機会を逃してしまったのだ。

 もしじいちゃんに何かあったら、その責任は全て自分にある。自分の手でじいちゃんを死に追いやってしまったのだ!

 残念ながら、今更気づいても、もう遅かった!

 「先生、申し訳ありません。先ほどはあなたの医療技術を疑ってしまい、お詫び申し上げます……

 あなたの医療技術は素晴らしいはずです。どうかもう一度考え直して、助けてください。いくらでも診療費を払います!」

 拓海は深く頭を下げ、何度もお辞儀をして誠意を示した。

 今、彼にとって真一は唯一の希望で、簡単に諦めるわけにはいかなかった。

 「これは診療費の問題ではありません。本当に自信がないのです……」

 真一は困った顔で答えた。

 「自信がない?

 それって、方法はあるけど成功率が低いってことですか?」

 拓海の目が輝き、一筋の希望が再び燃え上がった。

 「まあ、そうとも言えますね」

 真一は頷き、否定はしなかった。

 「それで、成功率はどれくらいですか?」

 拓海は慎重に尋ねた。

 「だいたい6か7割くらいですね」

 真一は正直に答えた。

 「何ですって?

 6か7割で自信がないって言うんですか?」

 拓海は一瞬呆然とし、血を吐きそうな気分になった。

 佐藤先生のような名医でさえ、彼の祖父の病状に対してはお手上げ状態で、少しの手立てもなかった。成功率の話などまったくなかった。

 たとえ江城町で国の名医と尊ばれる斉藤先生が来たとしても、成功率はせいぜい三、四割
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