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第51話

 風雅の里。

 真一が家に帰ると、家政婦の佐藤さんが台所で夕食を作っていた。

 「佐藤さん、和子は? まだ帰ってきていないの?」

 真一は不思議そうに尋ねた。

 「ああ、お嬢さんは会社で残業しています。まだ帰ってきていませんが、もうすぐ戻るはずです」

 佐藤さんは笑いながら答えた。和子は時々残業することにもう慣れっこだった。

 「もう9時過ぎてるのに、本当に頑張ってるんだな!」

 真一は驚き、和子の勤勉さに感心した。

 エレガンスグループが和子の手に渡ってから、わずか2年で規模が何倍にも成長したのも当然だと思った!

 しばらくして、ドアが開く音が聞こえ、和子が帰ってきた。

 真一はリビングに行き、彼女にお湯を注いだ。

 「和子、こんなに遅くまで残業して大丈夫? 疲れないの?」

 「まあ、大丈夫よ!

 最近、会社で重要なプロジェクトを進めていて、それが会社の将来に関わるから、何か問題が起きないようにしたくて……」

 和子は簡単に説明した。

 普段はこんなに遅くまで残業しないが、このプロジェクトのために最近は仕方なく頑張っていた。

 「どんなプロジェクト? 何か手伝えることがあるなら、言ってね」

 真一は一瞬躊躇したが、和子の助けになりたかった。

 「あなたが?無理よ!

 あなたは今、何もわかっていないし、手伝えることもないから。

 まずは基礎をしっかり学んで、早く一人前になってちょうだい」

 和子は軽く笑った。彼を見下しているわけではないが、真一の今の能力では役に立てないのは事実だった。

 「そっか……分かった」

 真一はため息をつき、少し失望した。和子をもっと助けたくて、彼女に認められたかったが、自分にはその力がないことが悔しかった。

 「これ、あなたにあげる」

 和子はハンドバッグから上品に包装されたギフトボックスを取り出し、真一に渡した。その中には最新型の高級スマートフォンが入っていた。

 「これ、僕に?」

 真一はスマホを手に取り、信じられない表情を浮かべた。

 「そうよ! 前のスマホが壊れたでしょ?携帯がないって聞いてたから、ちょうど帰り道でショッピングモールに寄って買ってきたの」

 和子は笑顔で言った。

 「和子、あなたは……」

 真一の鼻は少しツンとし、心に今まで感じたことのない温かさが満ちた
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