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第44話

 天命六鍼は気で鍼を操る必要がある。前回、彼が林さんの治療をした時には、体内に気が不足して最後はほとんど虚脱しかけた。

 今回、彼の修行はすでに練気一層に達しており、状況はかなり良くなっている。天命六鍼を施すのがさらに得意になった。

 それでも、彼が鍼治療を終えた後、修行が未熟なため、額には細かい汗がびっしりと浮かび上がり、全身が疲れ果ててしまった。

 ちょうどその時、足音が響いた。

 白衣を着た、27、8歳くらいの若い男の医者が、一人の若い女性看護師を連れて部屋に入ってきた。定例の回診のようだった。

 芹奈の体に数本の銀鍼が刺さっているのを見て、若い医者は驚き、急いで近づいてきた。

 「玲奈、これはどういうことだ?何をしているんだ!」

 「田村さん、実は、この秦さんは私の会社の同僚で、少しの医療知識を持っています……

 今、彼は母に鍼灸治療をしているんです……」

 玲奈は簡単に説明した。

 目の前の若い医者は田村博明と呼ばれ、芹奈の主治医であり、玲奈家の隣人でもあった。

 芹奈が急病に見舞われた時、玲奈はすぐに博明に助けを求め、そのおかげで芹奈は順調に入院して治療を受けることができた。

 「彼はあなたの同僚か?

 ばかげてる!

 彼は医者でもないのに、どうして山田さんに勝手に治療をするんだ!」

 博明は怒り、芹奈の身に刺さった銀鍼をつかもうと手を伸ばした。「お前、早く銀鍼を抜け!」

 「動くな!

 患者は治療中だ。勝手に銀鍼を抜くわけにはいかない!」

 真一は博明の腕を強く掴んで、彼の行動を阻止した。

 「放せ!

 山田さんの病気は脊髄損傷だ。この間の治療で、もうすぐ治るところなんだ!

 今、あなたが勝手に治療を行い、もし病気が悪化して全身麻痺になったら、その責任を取れるのか?」

 博明は怒りを抑えきれず、力いっぱい腕を引いたが、真一の手の力から逃れることはできなかった。

 「なんだって?

 田村さん、そんなに深刻なんですか!」

 玲奈と浩介姉弟は大変驚いた。特に浩介は、元々真一の医療技術を信じていなかったため、母親が変な治療のせいで麻痺する可能性があると知り、ますます心配になった。

 「当然だろ!

 二人とも、何をぼーっとしているんだ。早く銀鍼を抜け!」

 博明が怒鳴った。

 浩介はまるで夢から覚めたよう
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