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第40話

 真一がバイクで玲奈を送っている途中。

 ちょうど帰宅ラッシュで、道路には車や歩行者が多くいた。

 ある信号の交差点に差し掛かった。

 真一は歩行者を避けようとして急ブレーキをかけた。その瞬間、柔らかい感触が背中に伝わってきた。

 彼は驚いてしばらく呆然としていたが、すぐに状況を理解した。玲奈の胸が無意識に彼の背中に密着したのだ。薄い服越しに、その柔らかさと大きさをはっきりと感じ取ることができた!

 玲奈の顔は一瞬で真っ赤になり、できるだけ後ろに下がり、距離を取ろうとした。

 しかし、ブレーキの勢いで何度も真一の背中にぶつかってしまう。

 最初は真一もあまり気にしていなかったが、次第に心が揺れ始めた。彼もやはり若い男性なのだ。

 何度もその感触が繰り返されるうちに、心が落ち着かなくなっていった!

 バイクに女の子を乗せるのって、こんなにいいものだったんだ!

 もし今後和子を乗せることができたら、どんなに素晴らしいだろう……

 真一は考えれば考えるほど興奮してきた。初めてバイクに乗る楽しさを味わったのだ。

 前に彩香に弱々しい男と呼ばれたこともあって、このバイクを少し嫌っていた。一時は買い換えようかとさえ考えた。

 しかし今では絶対に手放したくないと思った!

 このバイクで和子を連れてドライブすることを楽しみにしていた。

 真一はぼんやりと考えながら、病院に到着すると、玲奈はすでに顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

 「田中さん、この近くで鍼灸用の銀鍼を売っている場所を知っていますか?」

 真一は尋ね、二人の間の気まずい雰囲気を打ち破った。

 「斜め向かいに大きな漢方薬局があります。そこに銀鍼があるかもしれません」

 玲奈はだんだんと落ち着いてきた。

 真一はうなずいた。二人で薬局に行き、銀鍼と専用の消毒液を買い、ついでに果物も買ってから病院に戻った。

 病院の一室で。

 真一は玲奈について病室に入り、玲奈の母親である山田芹奈と会った。

 芹奈は体が弱り、ベッドに半身を横たえて休んでいた。

 彼女のそばには、18歳か19歳くらいの若い男の子が座っていた。それが玲奈の弟、田中浩介だ。

 現在は夏休みで、学校はまだ始まっていなかった。浩介は学費を稼ぐためにアルバイトをしており、時間があるときは病院で母親の看病をしていた
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