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第25話

 「私、大丈夫だったのは、真一が助けてくれたおかげなの……」

 和子は首を振りながら、事の経緯を詳しく彩香に語った。

 彩香は和子の大学の同級生であり、親友でもある。

 和子の友達は少なく、彩香が彼女唯一の親友だった。

 もちろん、人工呼吸の件は軽く流しておいた。そういうことは親友でも言えないものだから。

 「彼はただの見知らぬ男で、あなたを助けるためにナイフの攻撃を受け止めただけでなく、犯人と共に死ぬ覚悟までしたってこと?

 これこそ本物の男らしさね!

 彼のそばにいれば、きっと安心感があるんでしょうね!」

 彩香の目は輝いて、小さい頃から安心感が欠けているため、テレビドラマで描かれる鉄血の軍人やハードボイルドな男たちを崇拝していた。

 残念ながら、そのようなドラマはすべてフィクションであり、彼女の生活にはそういう経験は一度もなかった。

 しかし今、彼女の身近には実在する例が現れた。

 和子の話を通じて、彼女は危険な場面さえ感じ取り、そして守られている安心感も感じていた。それは彼女が一番求めていたものだった。

 「そうだね!

 今の社会はとても冷たくて、彼みたいに勇ましい人はもうほとんどいないよね。

 彼があの時、命がけで私を守ってくれなかったら、私、もう……」

 和子は感動のあまりそうこぼした。

 その危険な夜の状況を思い出すと、彼女は今でも怖さを感じているが、真一に対して深い感謝も忘れない。

 「和子、彼の容姿について教えてくれない?イケメンで、男らしくて、かっこいい感じなの?」

 彩香は興奮して和子の腕を引っ張った。

 「うん、彼は結構イケメンだよ!」

 和子は頷いた。

 秦銘の容姿は特に目立つとは思わないけれど、明るくて魅力的で、特にその夜、彼女を守る姿は心に深く刻まれた。その瞬間の真一は本当にカッコよかった!

 ただ、威厳や権威について言えば、真一にはあまり当てはまらないかもしれない。

 「和子、今度ぜひ彼を紹介してくれる?本当に彼の姿を見てみたいわ!」

 彩香は笑顔で言い、期待に満ちた表情を浮かべた。

 元々気分が悪かった彼女も、突然、青空のような気分になり、空気さえも清々しく感じられるようになった。

 「今度じゃなく、今すぐ彼に会えるわよ」

 
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