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第13話

しかし、真一はそのお金が自分のものではないと知っており、それを受け取ることはできなかった。

 「お金の後に、またお金。お金さえあれば何でもできると思っているんですか!

 何度も言ったけど、私は真一が好きです。この人以外とは結婚しません!

 私が死なない限り、あなたは絶対に私たち二人を引き離すことはできません!」

 和子は怒りの声を上げた。

 母が亡くなって以来、彼女は父の愛を感じたことがなかった。必要なときにはいつも父がお金を渡すだけで、もううんざりしていた!

 「お前……

 いいだろう!

 今すぐお前の祖父に会いに行く!」

 健一は怒りで顔が真っ青になり、振り返って部屋を出て行った。

 ここ数年、彼と娘の間には深い溝ができており、二人の関係はどんどん悪化していた。

 さらに、娘はすでに大人になり、自分の会社とキャリアを持っており、彼が何を言っても従わなかった。

 家族の中で彼女の考えを変えることができる唯一の人物は、恐らくは祖父だけだった。

 健一と美咲の背中がだんだん遠ざかっていくのを見送りながら、和子はソファに崩れ落ち、顔色がとても悪かった。

 真一は和子を慰めたいと思っても、もともと口下手なので何を言えばいいのかわからなかった。

 しばらくが経った。

 和子の感情は徐々に落ち着いてきた。

 「真一、ごめんね。さっきの言葉、お父さんと美咲を怒らせるためにわざとだったの。あなたを盾にするつもりはなかったから。気にしないでね。」

 和子は申し訳なさそうに言った。

 「わかってる……

 気にしないから……」

 真一はためらいながら言った。

 和子は林家のお嬢様であり、まるで天の神のように美しい女性だった。

 一方、真一は離婚歴のある男で、無能者として知られており、親もおらず、何の才能もなかった。

 二人の間には天と地ほどの差があった。

 彼は和子が本当に自分を好きになるとは思えず、和子に対して現実離れした期待を抱くこともなかった。

 「ちょっとシャワーを浴びてくる……」

 真一はしばらく沈黙し、逃げるようにリビングを出て行った……

 シャワーを浴びた後。

 真一は和子が買ってくれた高級な服に着替えた。すると、瞬く間に爽やかになり、見た目もかなり格が上がった気がした。

 和子は改めて真一を見て、思わず目を輝かせた。

 「馬子にも衣装」という言葉もある。

 真一も今スーツを着ていると、ますます紳士的で、まるでエリートサラリーマンかカリスマ社長のようだった。

 総じて、真一は見れば見るほど魅力的なタイプで、最初はそれほど目立たなくても、見続けると独特の男性的な魅力が出てくる。

 その時、家政婦の佐藤さんが買い物から戻り、台所で昼食の準備をしていた。

 和子が大学を卒業してから家族を離れ、一人で住むようになった。

 その別荘には和子以外に、家政婦の佐藤さんが一人いて、彼女の日常生活をサポートしていた。

 昼食を済ませた後。

 「真一、昨夜あなたが私を助けたこと、おじいちゃんが知って、会いたいと言ってるの。今、都合はいい?」

 和子が尋ねた。

 「大丈夫だよ。」

 真一は頷き、そして和子と一緒に出かけた。

 ……

 林家の邸宅。

 庭園の中に位置し、広大な敷地を占めて、典型的なレトロな豪邸であった。

 本館のリビングで。

 真一は和子に従い、林家の家主である林さんに会った。

 林さんは70歳を超えており、リビングの中央に端然と座っていた。見た目は穏やかで優しそうだが、長い間高い地位にいたため、その存在感は圧倒的だった。

 年を取ったせいか、林さんの体調はここ二年ほどで悪化し、日々衰えていた。

 そのため、彼は一線を退き、会社の業務を息子の健一に任せていた。普段は将棋や太極拳などをするなどして、静かに余生を楽しんでいる。

 しかし、林さんは退いたとしても、依然として林家の家主であり、家族の精神的支柱であった。

 彼がいる限り、林家の基盤は安定して揺るがなかったのだ!

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