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第8話

弟は研究所での実習は学校よりも楽だと思っていた。

けれど、現実は彼に容赦なく牙を剥いた。

次の日、研究所に高度に腐敗した遺体が送られてきて、実習生たちはその遺体で検視を行うことになった。

「うっ......」

遺体安置所に入った途端、弟はすでに吐き気をこらえきれず、ずっとえずいていた。

彼が目を向けた先には、腐敗した女性の遺体がベッドの上に横たわっていた。

その遺体は膨れ上がり、無数のウジ虫が体を這い回っていた。

「もう無理だ、臭すぎる!お前らでやれよ!」

弟は床に這いつくばり、大きく口を開けて吐き続けた。

「こんな奴が法医なんて無理だろ。さっさと転科でもすれば?」

他の実習生が嘲笑を浮かべながら言った。

「今じゃ、どこの猫も杓子も法医になれるんだな!」

母さんに守られ、ちやほやされて育った弟にとって、こんな屈辱は初めてだった。

それでも意地を張り、何とか遺体安置所に残ろうとしたけれど、その後も次々と腐敗した遺体に直面し、弟は何度も何度も嘔吐を繰り返した。

「うわぁ......なんでこんなに気持ち悪いんだよ!」

それ以来、弟は実習生の間で嘲笑され、見下されるようになった。

その日の午後には、弟が行った抜き打ち試験で0点を取ったことが、研究所中で話題になっていた。

弟はそれに耐えきれず、母さんに泣きついた。

「お母さん、こんな仕事、もう一日も耐えられないよ!

これ以上やらされたら、マジで頭おかしくなっちゃうよ!」

私はその様子を見て、軽く笑った。

法医なんて、誰にでもできるものじゃないんだから。
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