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第9話

遺体のDNA鑑定結果が出て、刑事の佐藤隊長は蒼白な顔で母さんの前に立っていた。

「桜井さん、凌遅事件の遺体のDNA結果が出ました。これをまずご覧ください」

その重苦しい表情に、母さんは不安を感じながらも、書類を受け取った。

「生物学的な関係から言うと、彼女はあなたの娘です」

母さんの手が震えた。

「つまり、彼女は桜井文彦の姉、桜井笑美ということになります」

「ありえない!絶対にありえない!どうして私の娘が......

この報告、どこか間違っているはずよ!」

母さんは佐藤の襟元を掴んで、問い詰め続けた。

佐藤は哀れみの表情で母さんを見つめた。

「桜井さん、人は死んだら戻りません。どうか、心を落ち着けてください」

母さんは狂ったように遺体安置所に飛び込み、その途中で駆け寄ってきた弟とぶつかった。

「うわっ!お母さん、何するんだよ!ぶつかったじゃないか!」

弟が叫んだが、母さんは聞く耳を持たず、何も言わずに進んでいった。

母さんは乱暴に遺体の覆いを剥がした。

そこには、私の残された無残な体が横たわっていた。そして、母さんはその腕にある見覚えのあるあざを見つめ、呆然と座り込んでいた。

「どうして......こんなことに......」

震える声で、母さんは何度も呟いた。

その時、弟が無神経にも部屋に入ってきた。母さんの異変にも気づかず、遺体を見て顔をしかめた。

「うわ、こんな気持ち悪い死体、なんでまだ置いてるんだよ?さっさと処理しちゃえよ!

いったい、何やらかしたらこんな目に遭うんだか......」

弟は不快そうに母さんの腕を引っ張りながら言った。

「ねぇ、お母さん、さっさとここから出ようよ。こんなところにいたら運が悪くなっちゃうよ」

その瞬間、母さんは耐えきれなくなり、弟の腕を払いのけた。

「もうやめて!黙りなさい!」
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