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第9話

警察署の窒息するような威圧的な雰囲気の中、警察官は怒りに満ちた顔で、なぜバイクを盗んだのかと私に問いかけた。

私は冷静に周りを見渡し、何も言わなかった。

警察署に来たのは初めてだったが、それは子供の頃を思い出させた。

兄に抱かれながら、

「お兄ちゃん、私の夢は将来警察官になることだよ」と、純粋に話していたあの頃。

しかし今や、

私の口角には嗤笑が浮かんだ。

その夢は兄を死なせた罪の重さに押しつぶされ、遠く感じるばかりだった。

1時間後、母がやってきた。私を見つけると、ためらいもなく平手打ちをくらわせた。

「悠香、あんたは何てやつなんだ。食べさせてやって、着るものも与えてやったのに、盗みなんかして!」

と母はヒステリックに叫んだ。

その顔は、兄の亡骸が引き上げられた時の取り乱した母の顔と重なった。

「悠香、このクズ!息子を殺しやがって!」

私は手首の手錠を震わせ、頬のしびれる痛みを感じながらも、何も反応しなかった。ただ、母の怒りに満ちた顔をじっと見つめていた。

その時、警察官が

「子供を叩いたって意味がない。今すべきことは彼女をカウンセリングに連れて行くことだ」と声をかけた。

警察の言葉が終わると、母の怒りの声が再び響いた。

「カウンセリングだって?」

言っている間に、母が駆け寄って私の髪を引っ張った。

「悠香、あんたは一体いつまで私を苦しめるんだ!あんたが私の家を地獄にした。今度は狂人になって恥をかかせやがって…私は一体なぜあんたのようなクズを生んだのだ」

私は痺れる頭皮の痛みを感じつつ、

何も言わず、動くこともせず、ただ母の狂った顔をじっと見つめていた。

本当は母にこう伝えたい気持ちもあった。

心配しないで、すぐにでも命を捧げて兄に償うから。

しかし、今はこの抑えた怒りと共に母に反抗することで、不思議な快感を感じていた。

母がまるで私の髪をすべて引き抜こうとするかのように乱暴に引っ張っているその時。

突然、父の声が響き渡った。

「悠香、いつまでこんな無茶を続けるんだ。反抗期にも限度があるだろう」

兄が亡くなってから父が私に言った、最も厳しい言葉だった。

涙が自然にこぼれ落ちた。

あの夜、父に傘を届けに行ったとき、隣人の佐藤さんと話しているのを聞いたことが思い出された。

「あの時、どうして二人目なんかを産
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