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第5話

夜遅く、母に家の門前に置き去りにされた私は、身を縮めて眠りについたが、夢の中には兄の姿ばかりが浮かんでいた。

兄は私を藁の山の中に隠れさせて、かくれんぼをしていた。

石につまずいて倒れた私を見て、心配そうに抱き上げ、膝に乗せてくれた。

私はクスクスと笑っていた。

だが、そんな幸せな光景が一瞬にして消え、代わりに見えたのは、腫れ上がり原形を留めない兄の亡骸だった。

胸の奥が痛みで震える。

恐怖は鋭い刃のように、夢の中でも私の心を引き裂いていく。

けれど、夜が終われば朝はやってくる。毎年の贖罪の旅も、いつかは終わるのだ。

私は3日間を耐え抜いた。

そしてようやく、帰途に就いた。

帰り道では、

行きのように失禁することもなく、それで母の機嫌もだいぶ良くなった。

私も少し気持ちが軽くなった。

家に戻ると、母は手提げかばんをソファに投げ出した。

「私は麻雀をしに出かけるから、あんたは家でご飯を作って、父さんが帰ってきたら一緒に食べなさい」

その言葉を残すと、母は一言も私に目を向けることなく、さっさと出て行った。

急いで去っていく母の背中を見つめながら、私はまた手のひらを強く握りしめた。

毎年、故郷での儀式を終えた後、母は5日間姿を消す。

彼女がこの家から逃げたがっている理由も、私はよく知っている。この家には、どこにでも兄の痕跡が残っているからだ。

私も逃げたいと思ったことがある。実際、昔は逃げようとしたこともあった。

だが、母に見つかったそのとき、彼女は狂ったように私の首を絞めながら叫んだ。

「悠香、お兄ちゃんはあんたが殺したんだ。あんたはどうして逃げられると思うんだ?ここにいて、お兄ちゃんの遺品を見て、自分がどれだけお兄ちゃんを惨めにしたか反省しろ!」

それ以来、私は逃げるのをやめた。

故郷での儀式に参加してから家に戻っても、いつも兄の姿が私の目の前に浮かんでいる。

私はもう逃げる勇気がない。

あのおかしい儀式のように、私の存在自体が、この家で兄のために贖罪するためのものであるかのようだからだ。

心臓の痛みが胸に広がると同時に、胃のあたりにも痙攣するような痛みが襲ってきた。

まるで鋭い刃で裂かれ、炎で焼かれているかのように、

全身が痛みに包まれた。

私は体を縮こまらせ、耐え切れない苦痛の中でふと、窓際に置かれた兄のカ
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