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第8話

ヒロは私の提案に同意しなかった。

彼は、「君は優等生だから、前科を残すわけにはいかない。もうすぐ大学入試があるし、君には明るい未来が待っているんだ」と言ってくれた。

でも、ヒロは知らないのだ。

私はもう、生きていくための全ての力を使い果たしてしまっていることを。

もうこれ以上、苦しみ続けるのは嫌だ。

涙が瞬く間に頬を伝って落ちていく。

「ヒロ、先に皆を連れて逃げてくれない?お願いだから」

ヒロの体が小さく震えたが、

私の言った通り、遠くへと走り去っていった。

その背中を見つめながら、私は微笑んで頬の涙を拭った。

ヒロは昔からこうして優しくて、私が泣けばいつも私の頼みを聞いてくれた。

泣きながら「一緒に物を盗んでほしい」と頼んだときも、顔が青ざめて怯えていたのに、私の願いを叶えるために、彼は泥棒になってくれた。

思えば、なんて滑稽なことだろう。みんなに嫌われるこの泥棒の一団のリーダーは、結局のところ私なのだから。

そうしてぼんやりと考えているうちに、警察に捕まってしまった。

銀色の手錠が手首にかけられた瞬間、私は笑みを浮かべた。

やっと終わるんだ。
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