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第9話

「理解?まだ足りないの?じゃあ新之助の命を捧げろというの?」

私は胸を押さえながら、怒りと悲しみで声を張り上げた。

「綾が梁を崩していたのを、まさか知らなかったとでも?」

光信の顔色が一瞬で変わり、こめかみの血管がぴくぴくと震えている。

彼は目を赤くし、茫然と遠くを見つめていた。

「新之助......新之助の死は、価値のあることだったんだ」

価値がある?一つの命を、そんな言葉で片付けるつもりか。

私は光信に飛びかかり、思い切り頬を平手で打った。周りの兵たちは息を呑んで動けないでいる。

「あなたは新之助にたった一度会っただけで、彼を捨て駒のように扱った」

私は彼の襟を掴み、彼の目を鋭く見つめた。

「でも新之助は毎日あなたを思っていた。ある日には、あなたの行列を見ようとして塀から落ち、命を落としそうになった。

それなのに、あなたは彼を倒れた瓦礫の下に放置し、せめて遺体すらきれいに残してやらなかった。

光信、虎でさえ自分の子を傷つけない。あなたは城主になってから、心を失った化け物になったのよ」

光信は私に追い詰められ、後ずさりしながら背を薪の山にぶつけた。

「もう二度とあなたを見たくない。新之助も同じ気持ちでしょう」

光信は、私の決意の固さを感じ取ったようだ。

彼は突然、傷ついた子供のように震えながら私の腕を掴んだ。

「凛、お願いだ、私を置いて行かないでくれ。

君は私が唯一信じることができる存在なんだ。君となら、これからいくらでも子を持てる」

そう言って、彼は強く私の肩を掴み、薪が揺れて音を立てるほどだった。

「どうすれば許してくれる?綾を八つ裂きにし、長屋でお前を見捨てた者の首を刎ねるでもいい」

焦りに駆られたように彼は眼を動かし、何か解決策を見つけようと必死になっている。

「それとも、お前のように私を瓦で打て、頭を打てばいいか」

光信は私の手を取って、自分の頭に向かわせようとした。

その時、屋内から低く響く声が聞こえてきた。鷹四郎が振り切るように叫んでいた。

「上様、凛は長い苦しみをようやく乗り越えたんです。

彼女のことを本当に思うのであれば、もうこれ以上苦しめないでやってください」

母も飛び出してきた。光信の威厳を前にしながらも、勇気を奮い起こして言った。

「凛は新之助を産んだとき、体に無理をして体調を崩し、も
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