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第26話

思い返してみれば、本当に笑えてきた。

新婚の夜に置き去りにされたこともあったし、夫のいない誕生日を過ごしたことも何度もあった。楽しみにしていたプレゼントを他人に横取りされたことだってあるし、産婦人科の検診の日には夫が他の人と一緒にいるのを目撃した。これは全て私の身にふりかかったことだ……

今、私たちは離婚協議中なのに、友人が私のためにパーティを開いてくれることすら彼は気に食わないのだろうか。

私は口角を上げ、視線を下にずらして彼に言った。

「あなたが出て行かないなら、江川アナに電話をかけるわよ」

江川アナが来て彼と喧嘩をすれば、彼はどうしようもなくなるだろう。

江川宏は突然私の腰をぎゅっと抱きしめた。そして額を私の胸に押しあて、かすれ声でこう言った。

「南、こんな風になるなんて思っていなかったんだ。本当に」

こう言われると、私は彼を許してしまいそうになった。

口を開こうとした瞬間、彼がテーブルに置いていた携帯電話が鳴った。着信画面には『江川アナ』と表示されていた。

冷水をかぶせられたかのように私は一瞬にして冷静になり、彼を押しのけた。

「電話よ」

その時ちょうど山田時雄が台所から出てきた。

「南、だいたい片付け終わったから、先に伊賀丹生を送ってくるな」

「私が下まで送ります」

ベランダで電話に出ている彼の後ろ姿を見て、ふつふつと湧いてくる苛立ちを抑えた。

河崎来依を寝室に連れて行った後、私は山田時雄と意識を失った伊賀丹生を支えて階下に降りた。

しかし、山田時雄は私に力を使わせないようにして、負担を減らしてくれた。

彼は穏やかな優しいまなざしをして

「南、大丈夫か?」

と私に言った。

「え?」

私は一瞬戸惑ったが、すぐに彼が私の機嫌の悪さを感じ取ったことに気づいて

「大丈夫です」

と答えた。

エレベーターの中で、彼も少し酒を飲んだことを思い出した。

「先輩、代行を呼びましたか?呼んでいないなら、私が呼びますよ」

「心配しないで、もう呼んだよ」

彼は微笑んでしばらく黙ってから、エレベーターのドアが開く前に唇を動かした。

「離婚するのか?」

私は下を向き、うなずいて言った。

「はい、離婚するつもりです」

「よく考えて、後悔しないように」

彼は優しく忠告してくれた。

「後悔しません」

と真剣にそれに答えた
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