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第28話

彼女のこの言葉を以前の私が聞いていたら、私の心はざわついていただろう。

しかし、今の私は

『江川宏は私に一切の感情も持っていなかった』

という事実までも受け入れてしまったから、彼女を追求する気にもならなかった。

彼女を淡々と見つめながら

「あなたに勝ち目があるのなら、どうして毎日毎日わたしに突っかかってくるのよ?」

イカレ女。

朝っぱらから、私のオフィスに駆け込んできて、まるで正妻が愛人に問い詰めるかのように騒ぐなんて。

そんな私の全く動じない様子を見て、江川アナは少し焦ったようだ。追求されるよりも速く、勝者気取りをしながら言った。

「私のためよ」

彼女は私のデスクに両手をついて、少し身をかがめ、手下の敗者を蔑むかのように続けた。

「清水南、私のためじゃなきゃ彼はあなたなんかと結婚しなかったの!今頃あんたは江川家の『江』の字すら聞いたこともなかったでしょうね!」

それを聞いて、私は手のひらをギュッと握りしめた。心の中に言葉では言い表せない感覚が広がり、グッと締め付けられるような感じがした。

彼女は満足げに赤い唇の口角を上げ、両手を胸に組んで言った。

「お祖父さんが私を使って彼を脅したの。彼があなたと結婚しないなら、私を国外追放するってね……」

彼が私を愛していないことは分かっていたが、今それをあらためて聞くと、ますます悲しくなった。彼が私と結婚したのは、全て別の人のために仕方なくということなのか。

心の中に悲しみが広がったが、すぐにそれを抑え込んで、嘲笑して彼女に言った。

「あら、そう。じゃ、江川宏と結婚してあげた私に感謝することね。そうじゃなきゃ、あなたは今ここにはいないってことでしょ」

じゃなきゃ、国外追放されていたんだから感謝しなさい!

彼女は一瞬戸惑ったが、すぐに怒りに変わり、歯を食いしばって言った。

「よくもそんなでたらめを……」

「こんな態度はやめて」

私はイラつき眉をひそめ、髪を耳にかき上げながら言った。

「感謝されなくてもいいけど、こんなに敵意むき出しだなんて、あなたって恩知らずの冷酷な人ね」

「清水南!」

彼女は怒りに目をむきだして睨みつけてきたが、しばらく待っても何の言葉も出なかった。

おかしいと思い顔を上げてみると、彼女が私の耳をじっと見つめているのに気づいた。呼吸は荒く、手をギュッと握り締め
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